システムの中でどう生きるか? 4つの働き方の違いちきりんの“社会派”で行こう!(3/4 ページ)

» 2012年04月30日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]

伝統的なキャリアパスが崩壊

 実は、昔からこういう4種類の仕事はありました。仕事としてはどれも必要ですから当然です。

 しかし、高度成長期の日本では「全員が(4)から始まり、成果によって段階的に選抜されながら、(3)、(2)、(1)と昇っていく」というモデルだったのです。

 会社に入った新入社員は、まずは全員が何年か(4)の仕事をしてから、ようやく(3)の仕事につかせてもらい、また何年も経ってから(このあたりから選抜が始まり、タイミングには相当の差がつくものの、順次)、(2)の仕事に移っていく。それに沿って給与も少しずつ上がっていく。これが「終身雇用組織における、年功序列システム」でした。

 もちろん本社においては(1)や(2)のポストは限られていましたが、高度経済成長期ならいくらでも子会社が作れるので、「あなたは子会社の(2)をやってください」とか「孫会社の(1)にどうぞ」という形で、ほぼ全員にそれなりの処遇が用意できたのです。だから、(4)の仕事をしている人も「今の仕事はつまらないけど、将来は……」と夢を持つことができました。

 ところが、平成に入って異なる動きが出てきました。社会人になった後、「若い間は(4)か(3)だけを20年やっていろ」と言われるのが「耐えられない」と考える若者が出てきたのです。

 これら、「40歳までは、言われたことだけを粛々とやれと言われる人生はアホらし過ぎる」と思い始めた人の中には、外資系企業に転職したり、自ら起業することで、若くして(1)や(2)に飛び移ろうとする人たちが出てきました。

 また一方で、伝統的な(4)→(3)→(2)→(1)というキャリアパスも崩壊し始めました。多くの企業は成長率が鈍り、上に進める人の数が大きく減ってしまったのです。同時に給与も上がりにくくなってきました。

 すると(4)の人に「この制度は自分が(2)になるまで持たない」とか「このまま待っていても一生、(2)や(1)の席は回ってこないかも……」と思い始める人も出てきます。

 もちろん、市場の荒波にもまれることが怖かったり、住宅ローンや専業主婦や教育費のかかる子どもを抱えているために「沈むかもしれない船」に残ることを選ばざるを得なかったりする人もいます。

 しかし、その一方で「(1)や(2)になりたいのに、(4)から我慢する方法を選ぶのは得策ではない」と考える人も次第に増えてきたのです。

 そんな中グローバリゼーションが始まり、縦に並ぶ4つの職はより明確に分断され始めます。どの人たちもそれぞれの海外ライバルと競争することを求められ始めたのです。

 (1)の人たちは海外の起業家や事業家、時には国家と戦うことを求められます。「日本でオンラインショップで大成功!」と思っていたら、海外企業であるアマゾンが殴りこみをかけてくるとか、「日本で一番の空港だ!」と思っていたら、韓国の空港にアジアのトップ空港の座を奪われたりし始めたのです。

 日本における(1)の人たちのふがいなさが明確になるにつれ、「もっと奮起しないと」と思う将来の(1)候補も出てき始めます。彼らはもう「日本においては(1)である」ということには満足しないし、「そんなことで喜んでいても仕方ない」と思い始めています。彼らが見すえなければならないのは、海外の(1)との戦いだからです。

 これは(2)も同じです。彼らも海外ベンダーとの競争にさらされ始めています。そして、(3)や(4)の人たちもまた、インドや中国の労働者たちとコスト比較される時代になったのです。

 これにより、従来は縦に連続的につながっていた(1)から(4)の仕事は、横に分断され始めます。(1)は(1)、(4)は(4)であり、時間が経てば(4)の人もいつかは(1)になれる、なんてことはもう起こらない時代になったのです。

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