株式会社ワークスラボ代表取締役。関東エリアを中心に、アセスメントデベロップメントの考えのもと、企業における人材開発体系の構築から幹部社員育成プログラムの開発、各階層におけるアセスメントプログラムの開発・実施を手掛ける。また、慶應義塾大学ビジネススクールの受託研究開発担当として、企業の抱える経営課題の分析から解決に向けたプロジェクトの推進・マネジメントに従事する。
人事の方々とお話をしていてよく聞かれる質問の1つに、「研修で人は変わりますかね?」というものがある。特に受講者の年齢が高くなる管理職を対象とした研修の際には、はっきりと言葉に出さないまでも、頭をよぎっている様子がうかがえる時がある。
ここでいう「変わる」ということは、「日常の行動(考え方、仕事への取り組み姿勢、コミュニケーションの取り方など)に変化が現れるか? 現状からの成長はみられるか?」ということで使われていることが多いように思われる。
人材開発の仕事をしている私がこんなことを言うのも変なのだが、誤解を恐れずに言うと“一般的な集合研修”では、人は変わらないと思っている。
ここで言う“一般的な集合研修”とは、ある属性により選出された複数の受講者に対して、その受講者達が抱えていると予測される最も代表的な課題をテーマとして取り上げ、その重要性を説きながら教育をするというものである。
それではなぜ変わらないのか? その理由には大きく3つあると感じている。
これは、受講者自身が研修のテーマについてまったく課題を感じておらず、また切羽詰まった状態にもないということがある。簡単に言ってしまえば、学ぶ動機や研修のテーマが自己の実利に結び付くと感じる状態にないということである。
逆に言えば、受講者自身、自分には何が欠落しているのか理解していない状態にあるとも言える。ちなみに、自分自身で自分の何が欠けているかを客観的にみること(メタ認知)は、個人作業としては非常に難しいということが問題の背景にある。
これは、研修のゴールである「求めるレベル」に対して、受講者の「達成レベル」がどの程度であるかをしっかりと成績として評価し伝える仕組みがないということである。
この背景として、研修プログラムを作る側の者が受講者の職務について、具体的にどのような場面で、どのような能力が、どの程度必要なのか、を明確に深掘りできていないということから、受講者の能力をはっきりと評価することができないということがあげられる。
少数ではあるものの、何らかの評価(フィードバック)を受講者へしているところもあるが、その後、その評価を受講者が覆せる再チャレンジの場が用意されているところはほとんどない。
学習とは本来、失敗したあとに「次はこうしよう!」と同じ失敗をしないように、自己を見つめ直し、その原因を探り、解決へ向けて自分なりの打開策を考え、行動するところにある。だが、この「次はこうしよう!」の再チャレンジの場が用意されているところはほとんどない。
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