ソーシャルゲームにはどんなものがあるのか?ソーシャルゲームのすごい仕組み(2)(2/4 ページ)

» 2012年05月14日 08時00分 公開
[まつもとあつし,Business Media 誠]

協力・対戦を前面に【怪盗ロワイヤル】

 「釣り★スタ」は、いわば1人で遊ぶソーシャルゲーム未経験者を、知らず知らずのうちに仲間と遊ぶ、あるいは競争することの楽しさに誘導することに工夫を凝らしたゲームだ。一方、これから紹介する2009年にスタートしたモバゲーの「怪盗ロワイヤル」は、始めから戦略を駆使して対戦する要素を前面に押し出し、支持を拡げている。こちらもユーザー数は1000万人を超えるとされる。

怪盗ロワイヤル(出典:DeNA)

 怪盗(とはいっても、ルパン三世のような義賊型の)にふんして、お宝と呼ばれるアイテムを敵キャラクターや、他のプレイヤーから獲得しながらミッションをクリアしていく。

 つまりこのタイプのこのゲームは、「ロワイヤル=フランス語で「大勢」の意」という言葉からイメージされるように、多数のユーザー同士が対戦するという側面も持っている。ミッションクリアのために敵キャラクターを倒すには、さまざまな装備品で自軍(怪盗団)を強くしておく必要があり、またユーザー同士の対戦(お宝の奪い合い)では、事前に組み合わせておいたアイテムで互いの隙を突く・戦略の裏を読むといった頭脳戦も鍵を握る。

 「ネットの向こう側の見知らぬ人と対戦する」というのは、ソーシャルゲーム未経験だとハードルが高い。実際に顔を見て対話しながら遊ぶのと異なり、ネット空間では相手の表情を見ることはできない。そういう状態では不安になってしまうプレイヤーは多いはずだ。

 モバゲーはサービス開始当初は1人で遊ぶ携帯ゲームが中心だった。しかし、前述のGREE同様、ユーザーとともに少しずつソーシャルゲームを開拓していったといえるだろう。ゲーム以外のバーチャル空間ではアバターに飾られたプロフィールページを備え、プレイヤーが少なくともゲーム空間ではどんな存在なのか、イメージがつかめるような仕組みも整備されていった。また、後にまとめるように、サービス内でのいわゆる「出会い系」のような事件・事故を防ぐための対策にも重点が置かれていく。そういった「場作り」の結果、ソーシャルゲームの面白さを突き詰めた作品として「怪盗ロワイヤル」が現れたというとらえ方もできるはずだ。

 モバゲーの看板商品ともいえる「怪盗ロワイヤル」は、TBSテレビでドラマ版が放送され、青年マンガ誌(ヤングジャンプ)・少女マンガ誌(Cookie)でコミック版も連載されるなど、メディアミックス展開も進んでいる。

カードゲームの面白さ【ドラゴンコレクション】

 ソーシャルゲームにおける対戦の面白さ=バーチャル空間で見知らぬ相手と戦略を競う面白さ、には実は先達がいる。後にゲームの歴史を考える際にも詳しく見ていこうと思うが、いわゆるTCG=トレーディングカードゲームがそれだ。

 持ち札のなかから指定枚数で対戦カードを選び(これを「デッキを組む」と呼んだりする)、相手の出す札を上回るカードで応戦して、勝利すればカードを獲得できる、というのが基本的なゲームの流れだ。あらかじめできるだけ多くの、かつできるだけ強いカードを集めておいた上で、対戦相手が繰り出してくるであろうカードを予測して、デッキを組んでおく。事前準備の戦略性、そして実際の対戦で手札のなかから効果的なカードを見極めて提示する戦術性が求められる。

 その始祖ともいえる「マジック・ザ・ギャザリング」は1993年に米国で生まれた。日本にも輸入されたトレーディングカードゲーム(TCG)はボードゲームマニアから人気が拡がり、現在ではブシロードの「ヴァンガード」のようにテレビアニメ化され、子どもたちにも支持されているものもある。こちらは紙に印刷されたカードで遊ぶのが基本だ。

 パッケージゲーム大手のコナミが、携帯向けカードゲームとしてGREEで配信を行っているのが「ドラゴンコレクション」だ。2010年9月に開始して、早くも登録会員数は550万人を超えたというのは前述の通り。

ドラゴンコレクション(出典:コナミ)

 デジタルならではの要素として、対人バトルだけでなく、モンスター(NPC=ノン・プレイヤー・キャラクターとも呼ばれる)戦があったり、そこでほかのユーザーとチームを組んで協力して戦うことができる。また、戦闘によってカード自体の経験値を上げたり、カードとカードを掛け合わせて別のカードに変化(合成)させるといった、デジタル・ソーシャルならではの要素も加わっている。

 ここまで読んで気付いた読者も多いと思うが、そのゲームシステムは「怪盗ロワイヤル」ともよく似ている。人によっては「ソーシャルゲームの9割方はカードゲームをモチーフにしている」と呼ぶくらいだ。それほど、20年近く前に生まれたマジック・ザ・ギャザリングはよくできたゲームシステムだったもいえるだろう。テレビCMでよく見かけるようになった、GREEの「探検ドリランド」なども同様のゲームシステムを備えている。カードの絵柄もよく似ており、30代以上の読者であればおなじみのビックリマンチョコを彷彿(ほうふつ)とさせるモチーフだ。こういうところにもソーシャルゲーム利用者の世代の拡がりを感じとることができる。

 前述の通り、ドラゴンコレクションはパッケージゲーム大手のコナミが、自ら手がけ成功したソーシャルゲームであり、ゲーム業界の変化を象徴するタイトルでもある。その変化については後ほどさらにくわしく見ていきたい。

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