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» 2012年05月15日 08時00分 UPDATE

ソーシャルゲームのすごい仕組み(3):ソーシャルゲームが儲かる仕組み (3/4)

[まつもとあつし,Business Media 誠]

 ソーシャルゲームの設計や運営で重要なのは、このプレイヤーの4つの側面を理解し、ゲーム内での行動を分析することで彼らの欲求を把握し、それを満たすようなミッションを間断なく用意するといった工夫だ。逆にいえば、それをうまく実現できれば、そのクリアのために必要な課金アイテムがより多く購入され、ゲーム自体の収益性が向上していくというわけだ。

 こういった、「欲求を満たす」という基本的なモチベーションは、いわば情動に基づくものだ。もう1つ儲かる仕組みで重要なのは、「効率的に結果を手に入れたい」といういわば理性に訴えかける選択肢を提示することだ。

 ソーシャルゲームでアイテムを買いたくなる瞬間は、たとえば強いボスを倒せない時というのが代表例といえるだろう。時間を掛けてプレイヤー自身あるいは仲間のステータスを上げれば、ボスを倒し、次のステージへと進めるということが分かっているのだが、まだそのためには数時間、あるいは数日プレイを重ねなければならない――ソーシャルゲームはパッケージゲームと異なり、移動中などの隙間時間にプレイすることが多いため、どうしても進行は遅くなる――その時、十分にプレイヤーのモチベーションが高まっていれば、数百円でその手間と時間を省くことができる課金アイテムは合理的な選択肢となる。逆にいえば、モチベーションが不十分であればプレイヤーはゲームのプレイをその時点で諦めてしまうだろう。KPIを監視しながらユーザーのモチベーションの「熱量」を常に把握しなければならないのはそのためだ。

 代表例として街作り型ソーシャルゲームのCityVilleを挙げよう。このゲームには、コインとキャッシュという2種類のゲーム内通貨が用意されている。コイン(小銭)の方は、無料プレイでも時間の経過とともに数千、数万単位で稼いでいくことができる。私たちの日常感覚では、このコインを集めればキャッシュ(紙幣)に両替できそうなものだが、そうはなっていないところがミソだ。

 街の住人の満足度を損ねてしまうと、人口が増えず街は発展しない。そのためにまず必要なのが市役所などの公共施設なのだが、ここには職員が必要という設定になっている。職員はFacebook上のほかのユーザーを割り当てることができるが、一般的なユーザーではとてもすべてをカバーできない。

 そこで、キャッシュを払ってNPC(ノンプレイヤーキャラクター=あらかじめゲーム内に用意されたプレイヤー以外のキャラクター)を雇う必要に迫られてくる。

 ゲーム内でアクションを起こすと、それによって得られる経験値の加算によってレベルが上がるが、キャッシュはレベルアップごとに「1」しか得られない。たとえば市役所に職員が5人必要で、1人を雇うのに1キャッシュ必要な場合は、マメにプレイしても数日以上掛かってしまう。せっかくほかのユーザーが街の発展を助けるために手を貸してくれたりもしているのに、なかなか街が発展しないのは、なんだか申しわけないし、かっこわるい、けれども時間をかけるのも大変だ……。こういった問題をいわば「現実のおカネ」で解決できるようにしたのがアイテム課金であり、CityVilleで頻繁にキャッシュの購入を勧めてくるのはそういうわけだ。

 もう1つ例を挙げよう。

 ゲーム性を持たせながら課金アイテムを購入する仕組みとして、携帯電話でのソーシャルゲーム以前から存在していたのが、いわゆる「ガチャ」と呼ばれるものだ。かつては駄菓子屋の前に置かれ、現在でも玩具店などの店頭でよく見かける、100円玉を入れてハンドルを回す「ガチャガチャ」と呼ばれる機械。ゲーム上にそれを再現したのが「ガチャ」だ。

 ユーザーは持っているゲーム内仮想通貨を消費することで、ハンドルを回すことができ、一定の確率で効力の高いアイテムを手に入れることができる。逆にいえば実際の機械同様ハズレ、つまり期待したものと違うアイテムが出てくる場合もある。

 こうやって手に入れたアイテムで、自身のプレイを有利に進めたり、あるいは同じチームで協力プレイを行う仲間にアイテムを与えたりすることで、ゲームのさらなる楽しさを味わえる、というわけだ。ゲーム内のユーザー行動の活発度が下がってくると、ゲーム運営者はこのガチャに特殊アイテムを用意して、ユーザーの利用を促すといった対策を採ることも多い。

 これらの仕組みが、パチンコのように射幸心を煽っている、あるいは人間が本来持つ承認欲求を過剰に刺激しているといった指摘や批判もあるが、それについては第二章以降でくわしく考えていこう。ここでは、ゲーミフィケーションの理論に基づいて、ゲームの運営者は日々ユーザーのモチベーションの「熱量」に目を光らせ、調整に汗を流している、というイメージを持ってもらえればと思う。

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