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» 2012年05月31日 08時00分 公開

アニメビジネスの今(後編):米国でガンダムよりトランスフォーマーが売れるワケ (3/4)

[増田弘道,Business Media 誠]

過去にあったロボットアニメの海外進出

 『トランスフォーマー』のようなローカライズがなされないままでは、現状の日本製ロボットキャラクターがフランケンシュタイン・コンプレックスの壁を越えるのは難しい。しかし、過去にいくつか成功した例がないわけではない。

 1963年にオンエアされた日本初の30分テレビアニメシリーズ『鉄腕アトム』は、米国の3大ネットワークであるNBCに買い付けられ、全米放映されるという快挙を成し遂げた(実際の放送はNBCではなく地方局をネットするシンジュケーション・ネットワーク)。

 また1978年、国営放送が3チャンネルに分かれ、極端なソフト不足に陥っていたフランスで東映動画(現東映アニメーション)製作の『ゴルドラック』(原題『グレンダイザー』)を放映すると、「視聴率100%」と言われるほど(世代視聴率だろうが)の空前のブームが巻き起こった。

 さらに、マルコス政権下の1978年、キリスト教徒の多いフィリピンの国営放送でオンエアされた『ボルテスV』はまたたく間に子どもたちの人気をさらい、最高視聴率58%という驚異的な数字を記録。ちまたには関連商品があふれ、子どもたちはそのとりことなった。

 このように過去にも成功例はあったのだが、これらのケースを考えるに、いずれも出会い頭という感じが強い。それまでアニメーションと言えば、ディズニーのようなキッズ向けのものしか見たことがなかったところに、リアルな世界観、スピーディな展開、バイオレンス要素をふんだんに持っていたロボットアニメがいきなり登場し、少年たちの心をわしづかみにしたのだが、これはまだロボットアニメの何たるかも分からない状況であったから進出できたのだろう。

 そのため、米国は1960年代末から厳しくなった子ども番組に対する規制のため、日本製アニメは壊滅状態となった。フランスでは日本製アニメがあまりにも人気が出過ぎたため、「文化侵略」として1980年代に輸入規制がかかる。フィリピンでも、「内容が暴力的すぎる。成長期の子どもに悪影響を与える番組だ」ということで大統領自ら放送中止を宣言するという結果に終わった。

 これらの事例を見る限り、国を問わず子どもにとってロボットアニメは魅力的であることが分かる。実際、『トランスフォーマー』がブレイクしたのだから潜在的な可能性は十分にある。

 また、ロボットに対する宗教的なタブーも少ないアジアでは成功する可能性は高い。事実、杭州アニメーション・フェスティバルで、中国にガンダムファンが多いことは確認済みである。お台場のガンダムフロント東京もアジアからのファンを多分に意識しており、バンダイナムコも中国でのガンダム事業を強化するために中国大手通販サイト「陶宝(タオバオ)」に出店。3年後にアジアでのガンダム商品の売り上げを約2倍の80億円に引き上げる展開を狙っている。

 だが、西欧圏では相変わらず親の目から見ればロボットは好ましい存在ではなく、加えて海外の厳しい放送コードなどを考えると、現状のまま浸透できるとは考えにくい。『トランスフォーマー』のように20年の歳月をかけてローカライズできた例もあるが、ガンダムがその道を歩めるかどうかはプロデュースサイドの判断によるだろう(ガンダムも当然ハリウッドから声がかかっているはずだ)。

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