コラム
» 2012年06月21日 08時00分 公開

烏賀陽弘道氏の写真が伝える、飯舘村の1年相場英雄の時事日想(2/4 ページ)

[相場英雄,Business Media 誠]
福島 飯舘村の四季』(双葉社)

 昨年の震災以降、この書店には何度も足を運んだ。毎回、店先でこのご婦人と同じような人たちに会った。親族を亡くされた方、故郷の家が流された人。多くのお客さんがこのコーナーに足を止め、写真集や関連書籍を手に取り、涙を浮かべていた。

 店のスタッフによれば、写真集をレジに持ち込み、「ここに俺の家があった」と泣きながら会計を済ませたお客さんも珍しくなかったとか。

 このご婦人がどのような境遇に遭われたのかは分からない。大津波を憎んで涙を流したのか。はたまた、ご家族を亡くされた悲しみを思い出したのか。私は当事者ではない。彼らがなぜ津波や震災の記録を綴った写真集を手に取るのか、それぞれの真意は分からない。だが棚に積んである各種の写真集を通じ、彼らは確実に故郷を思っていたのだ。

 今回、取り上げる写真集のタイトルは『福島 飯舘村の四季』(双葉社)だ。

 烏賀陽氏は元朝日新聞記者で、現在はフリーのジャーナリストとして活躍中。特に、福島第一原発事故に関するJBpressの連載リポートが大反響を集めている人物だ。

 同サイトの一連のリポートを読んでいただければ分かるが(参照リンク)、同氏の取材は精緻であり、かつ政府の無策に対する怒り、そして追及は凄まじい。

 だが、本作に収録されている飯舘村の風景を撮影した写真はどれも美しく、かつ、優しいトーンのものばかりだ。

 烏賀陽氏も触れているが、農業や酪農が盛んだった村の光景は、日本の原風景と言っても過言ではない。だが、写真集の中には、ほとんど人がいない。

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