どう変わる? 大阪の鉄道網「なにわ筋線」杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)

» 2012年06月29日 08時02分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 なにわ筋線の北側は大阪駅の北側にある梅田貨物駅で貨物線に接続する。ここから東海道線の新大阪駅へ通じる。南側はなにわ筋の地下に新線を建設し、JR難波駅と南海汐見橋駅に接続する。どちらも、その先には関西空港へのアクセスルートがある。そして、JR西日本も南海も、なにわ筋線の乗り入れに期待している。

 JR難波駅は関西本線の起点で、大阪環状線から内側にちょっとだけ入ったところにある。ここから始まる線路は大阪環状線と並び、天王寺から阪和線に直通可能となる。なにわ筋線が整備されると、北梅田の貨物線からなにわ筋線に入り、難波を経由できる。南海電鉄もなにわ線に乗り入れると、ラピートを北梅田・新大阪へ接続できる。「はるか」「ラピート」ともに起死回生のチャンスである。

南海電鉄「汐見橋線」と大阪市営地下鉄に影響する

 なにわ筋線計画が再起動し、費用対効果を再検討した結果、南海電鉄側の接続点は汐見橋駅からなんば駅に変更される方針だ。南海電鉄側は汐見橋駅付近を地下化して接続する案と、なんば駅接続の副案を示していた。2011年3月に報じられた国土交通省近畿運輸局の試算によると、汐見橋線の地下化より、なんば駅に新地下駅を作る案のほうが約700億円も少ない。また、汐見橋駅ルートは都心から離れるため、黒字化の見込みが立たないという。

 大阪府市統合本部が2011年5月8日に発表した「地下鉄事業に関する中間報告」によると、なにわ筋線のJR難波駅、南海なんば駅ルートの事業費は1800億〜2500億円。費用の差は中間駅の有無による。このほかに東海道貨物線の地下化工事費として約690億円が必要だ。利用客の見込みは中間駅なしの場合が約15万人、中間駅がある場合は21万人となり、中間駅を設けたほうが費用対効果が高いと言えそうだ。

 ただし「なにわ筋線」の建設によって、並行する大阪市営地下鉄の影響も考慮する必要がある。新大阪から都心へのアクセス路線という意味では御堂筋線の利用客を奪い、梅田から難波・岸里玉出地域では地下鉄四つ橋線の利用客を奪う。「なにわ筋線」を中間駅なしで建設した場合、大阪市営地下鉄は約67億円の減収となり、中間駅ありで建設すると約95億円の減収という。

赤線が「なにわ筋線」、緑線が「なにわ筋線汐見橋ルート」、青線が「東海道線貨物支線」(現在は特急はるかを運行)

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