どう変わる? 大阪の鉄道網「なにわ筋線」杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)

» 2012年06月29日 08時02分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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 大阪市営地下鉄は2003年度から単年度黒字となっており、2010年には累積欠損金を解消して約239億円の黒字となっている。この中には大阪市からの補助金約97億円と、敬老パス実施による市の補助金約53億円も含まれており、これを除いても約89億円の黒字だ。自治体が運営する地下鉄事業としてはかなり優秀である。

 「グランドデザイン・大阪」は民間主導を目指しており、大阪市営地下鉄の民営化も検討されている。また、黒字を還元して料金を値下げし、人々の移動の活性化を図ろうというプランもある。試算によると、値下げによる減収は約60億円。「なにわ筋線」が開業して67億円の減収になれば、地下鉄の料金値下げ案は難しくなるだろう。

 答申8合において「なにわ筋線」は、既存の鉄道インフラを再利用して、大阪の交通ネットワークを充実させようという意図があったのだろう。だから汐見橋駅で途切れた汐見橋線に注目した。私は「なにわ筋線」構想を知った時、汐見橋線が活性化されるかもしれない、と嬉しくなった。

 しかし、関空アクセスの意味が強くなった「なにわ筋線」計画で、汐見橋線は置き去りにされてしまった。鉄道ファンならずとも新線開業には期待したいところだが、汐見橋線の行く末も心配である。

梅田北の貨物駅。手前の線路を「はるか」が走行する。この線路は地下化される予定で、大阪駅と乗り換え可能な新駅が構想されている
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