本当にできないの? 鉄道ファンが笑う、大阪の新ルート杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)

» 2012年07月06日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

技術的に可能、しかし

 もともと予定していた新大阪連絡線でも、阪急電鉄と四つ橋線は電化方式が違う。電化方式の違いは電車側の対応で克服できる問題でもある。それを4線軌条とするだけだから、技術的な問題はクリアできる。ただし、両方に対応する電車は新規開発が必要だし、四つ橋線の4線化工事を実施するなら、その期間中は運休する必要もあるだろう。四つ橋線は御堂筋線の混雑緩和を目的として作られたので、運休すれば御堂筋線に旅客が集中する。それに耐えられるだろうか。

 南海と四つ橋線の両方に対応する電車について考えると、かなり小型になりそうである。両線のトンネル断面やカーブ半径の小さい方に合わせる必要があるし、四つ橋線内でパンタグラフを使うなら、そのぶんの屋根は低くなる。南海線内でパンタグラフを使い、四つ橋線でサードレールを使うというミックスタイプも考えられるが、部品点数の多さと製造コストが乗客数や売り上げに見合うかという問題もある。

 距離の短い四つ橋線では電力の供給を受けず、バッテリーで電車を走らせるという方法もある。バッテリー電車を使う案は神奈川県川崎市も検討している。しかし、川崎市は車両の技術開発の進捗があるまで、地下鉄事業を停止させる方針のようだ。それなら、南海電鉄から四つ橋線に入った電車は、四つ橋線内専用のサードレール式機関車に牽引させてもいい。これがいちばん低コストな気がする。

 ちなみに地下鉄民営化・成長戦略プロジェクトチームの試算では、西梅田―新大阪間の新線の事業費は約1300億円から約1350億円、南海電鉄と四つ橋線の接続路線の建設費が約910億円という。ただし、ここには費用未知数の4線化工事と対応車両の開発費は含まれていない。なにわ筋線の事業費は約2490億〜3190億円と試算されているから、これと比較して、どちらが効果的か、両方とも実施する必要があるか、検討の余地がある。

 採算性として考えれば厳しいだろう。もっとも、橋下市長は知事時代に梅田と関空を結ぶリニアモーターカーの構想も描いた。それに比べれば、コスト的には現実的かもしれない。

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