裏メニュー「周遊きっぷ」のメリットとデメリット杉山淳一の時事日想(3/4 ページ)

» 2012年07月20日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

発行条件が複雑で割引の例外もある

 周遊きっぷの面白いところは、「ゆき券」「かえり券」が異なる経路でも良いというルールだ。単純な「往復きっぷ+フリーきっぷ」ではない。例えば、私が2007年に使った「山寺・松島ゾーン」は、「ゆき券」が東京都区内―高崎―長岡―新潟―坂町―米沢―山形で、「かえり券」は山形―米沢―福島―郡山―東京都区内だった。201キロメートル以上の片道きっぷになれば、ルートを自由に設定できる。ゾーン以外の場所で途中下車して旅を楽しめる。

「山寺・松島ゾーン」を使った時の「ゆき券」「かえり券」ルート

 北海道・四国・九州方面のゾーンのなかには、片道のみ航空機を利用できるエリアもある。長距離の往復とも鉄道に縛られずに済む。航空券はきっぷと同時に購入してもいいし、航空会社のオンライン販売を利用し、控えをプリントしてJRの窓口に見せるだけでもいい。航空券の事前割引を使えば、とってもオトクで自由度の高い旅を組み立てられる。

周遊きっぷ「山寺・松島ゾーン」。「ゆき券」と「かえり券」の経路が異なる。往路に乗ったムーンライトえちごの「グリーン券」は別料金

 ……と、ここまではメリットばかり書いたけれど、デメリットもある。それはルールの複雑さと割引の例外だ。

 「ゆき券」「かえり券」とも、割引があるだけで普通片道乗車券とほとんど同じ。普通乗車券も長距離になると経由地によって運賃計算のルールが異なる。例えば「岩国―櫛ケ浜の間を途中下車しない場合は、実際には山陽本線に乗ったとしても、距離の短い岩徳線経由で計算する」とか、「東京から札幌へ寝台特急北斗星で行く場合、東京―盛岡、青森―札幌のJRの乗車距離を通算して運賃を算出し、IGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道の運賃を合算する」などである。また、乗車距離によって有効期間も変わる。

 もうひとつ厄介な制度は、東海道新幹線の割引規定だ。「ゆき券」または「かえり券」で東海道新幹線を利用する場合、新幹線の利用距離にかかわらず、券面の距離が600キロメートル以内だと割引率がたった5%(学割は2割引)に下がってしまう。

 先に東京から「京阪神ゾーン」を利用する例を挙げたが、あれは往復とも在来線の場合だ。新大阪まで新幹線を使うと3400円も高くなる。東海道本線の夜行急行「銀河」がなくなったいま、誰だって新幹線を使いたいだろう。「現地で乗り放題のゾーン券をどれだけ使い倒すか」で損得の判断が別れそうだ。

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