自閉症をもっと世の中に知らせたい! で、どうしたのか?ソーシャルインフルエンス(2/4 ページ)

» 2012年07月25日 18時31分 公開
[Business Media 誠]

自閉症をもっと世の中に知らせたい

 「自閉症」についてどれほど知っているだろうか。よく「ひきこもり」などと混同されるが、自閉症(Autism)は一種の発達障害。3歳位までに症状があらわれる先天性の機能障害だが、具体的なメカニズムについては未解明の部分が多い。その大きな特徴が、コミュニケーションの障害だ。例えば、「会話をしても目線が合わない」「叱られているのに、笑っている」などの行動が目立ち、「友達や仲間がうまくつくれない」「楽しいことや興味のあることを共有しない」など社会性も欠如する。

 オーストラリアのNPOである「The AEIOU Foundation」は、自閉症の子どもたちを支援するために2005年に設立された。いまだ社会認知が低いとされるこの疾患を啓発して基金を集めるのがその活動目的。基金は主に患者家族、募金や寄付、政府の支援でまかなわれており、オーストラリア国内で9カ所のケアセンターを運営していた。国際的にも自閉症患者は増加傾向にあることから、疾患理解の促進と支援体制の拡大が必要だった。

 AEIOUの中には、ほんの2〜3名の小さな広報チームがあり、リリースやイベントなど、ささやかなPR活動を地道に続けていた。しかし、資金も限られているうえ、難病の社会的理解を得るのはそう簡単なことではない。「もっと社会にインパクトを与えられる方法はないものか」――悩んだあげく、AEIOUはプロフェッショナルに相談することを決める。ひとりの女性職員のつてをたどって相談したのが、クリエイティブ・エージェンシーのサピエントニトロと、戦略PR会社ローランドだった。

 サピエントニトロは、その前年に「ベスト・ジョブ・イン・ザ・ワールド」(グレートバリアリーフに浮かぶ「ハミルトン島」の管理人を、1000万円の報酬で世界中から募集し大きな話題となった)のキャンペーンを手がけ、ソーシャルメディアを駆使する斬新なアイデアで注目されていた。ローランドは、グローバルPR会社フライシュマン・ヒラード・グループに属し、世界規模のネットワークを有していた。この相談に社会的意義を感じた2社は、こうして「自閉症の啓発」という課題にチャレンジすることになった。

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