自閉症をもっと世の中に知らせたい! で、どうしたのか?ソーシャルインフルエンス(3/4 ページ)

» 2012年07月25日 18時31分 公開
[Business Media 誠]

「コミュニケーション・シャットダウン」というアイデア 

 サピエントニトロを中心に、「コアアイデア」を生み出すべく、ブレーンストーミングが始まった。自閉症の大きな特徴はコミュニケーション障害であり、その結果、子どもたちは社会とのかかわりがとれない「孤立感」を感じている。この孤立感が、伝達すべきポイントであろうという方向にまとまった。しかし問題は、それをどう話題化するか、だ。多くの人に「関係のあること」として認識してもらい、メディアが「報道したいこと」ととらえてくれるか―それこそが、プロの腕の見せどころだ。

 難病の啓発というのは、実はここが難しい。メタボやアンチエイジングなど多くの人に関係のある健康情報ではないし、クチコミ要素も少ない。社会性という意味で報道価値はあるものの、他にも報道すべき難病はたくさんある。また、「なぜいま報道すべきなのか」という理由づけも弱い。社会現象になるほど急増しているわけではないのだ。つまり、「そのまま」の情報では難しい。しっかりと自閉症の本質を伝えながらも、違った側面から話題性や社会性を付加する必要がある。

 ここで、ヒントとなったのが、「ソーシャルメディア中毒」と呼ばれる事象だった。2010年の米国での調査によると、米国女性の40%が「自分はFacebook中毒」だと回答している。その後シカゴ大学経営大学院がおこなった調査によると、日常生活のなかで生じるたくさんの欲求の中でも、「ソーシャルネットワークの更新をチェックしたい!」という気持ちは、なんとお酒を求めるものより強かったということだ。

 あなたも、「1日だけ、あなたのFacebookを閉鎖せよ」――こう命じられたら、どうだろう? 「ニュースフィードも気になるし、最近は仕事のやりとりもFacebook経由が増えたし……そもそも、なんか落ち着かないだろうなあ」という感じのはずだ。それは、社会とのかかわりを閉ざされた「孤立感」に他ならない。自閉症患者が感じているように。

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