Web、メール、SNS――ANAのネット戦略に学ぶ(2/4 ページ)

» 2012年08月03日 18時35分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 スキップサービスの導入により、乗客はチケットの購入だけでなく、座席指定やチェックインまでネットで行えるようになった。10年くらい前までは、オペレーターが予約をし、旅行代理店などでチケットを発券して、出発当日は空港の航空会社カウンターでチェックインしていたことを思えば、チケット購入から搭乗までの導線は、格段にシンプルになったと言えるだろう。現在ANAは、実に全席の7割を自社で販売しているという。

インターネットの発展とともにANAのサービスは進化してきた(左)。10年前(中)とスキップサービス導入後(右)を比べると、航空券を買って搭乗するまでの導線が非常にシンプルになっていることが分かる

データ分析の結果をメール配信に生かす

 ANAのサイトには毎日40万人という膨大な数のユーザーからアクセスがある。アクセスデータの分析に活用しているのが、前述のSiteCatalystだ。ユーザー数は50〜60人、分析の対象となるページ数は数千ページ。

 「SiteCatalystを導入した決め手は、楽天など大規模サイトですでに導入実績があったこと。また、ID管理やアラート機能などがあり、運用管理がしやすい。また、カスタマイズ変数がたくさんある点、データ分類が可能な点もメリットです。またオフィスアプリとの連携ができるのはいいですね。Excelで定型フォームを作ってあるので、ほとんどの人たちは(SiteCatalystではなく)Excelからデータ分析をしています」(前田氏)

筆者宛に先日届いた沖縄旅行の広告メール。メール配信を許可している会員には、このようなプロモーション用メールのほか、誕生日祝いや暑中見舞いといったメールも不定期に届く

 もう1つ興味深いのがメールを使った顧客へのアプローチだ。ANAではANAマイレージ会員という会員組織を持っており、ダイレクトメールを送ることで定期的に会員へのアプローチを行っている。会員2000万人のうち、メール送信が可能な会員数は約500万人、配信メールの数は月に約40〜50本と多く、すべて送っていると嫌がられてしまうため、定期メルマガ(3種類)はパーミッションがある会員全員に、不定期メルマガについては対象者をターゲティングして配信している。

 メールを配信する対象者のターゲティングにも、SiteCatalystを使っている。「従来のターゲティングメールは、自社データベースから利用実績と顧客データをセグメント化して、ターゲットを作成していました。過去のデータから仮説を立ててターゲット作成するしかなかったのです。しかしSiteCatalystと連携することによって、自社サイト内で顧客がどのように行動しているかを見て、そこからターゲットを作成できるようになった。利用者の将来のニーズに基づく戦略立案が可能になりました。例えば、今までであれば『去年旅行に行った人に、今年も旅行商品を提案しよう』という形でしか御案内できなかったものが、今は『北海道行きの航空券やツアーのページを見ている人に対して、北海道旅行を提案するDMを送ろう』ということが可能になりました。いわゆる行動ターゲティングですが、これによって、メールのクリック数は4倍に、コンバージョンは1.4倍に伸びています」(前田氏)

SiteCatalystによる自社サイト内の行動分析とダイレクトメールを組み合わせることにより、利用者の将来のニーズに基づく戦略立案が可能になった

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