受信料徴収や新聞勧誘の裏ワザ、“てんぷら”って何?窪田順生の時事日想(1/2 ページ)

» 2012年08月28日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 8月22日発売の『週刊新潮』に「みなさまのNHKの『詐欺的』受信料徴収を告発する」という記事を書かせてもらった。

 ザックリと説明すると、NHKの受信料徴収を担当している「地域スタッフ」のなかで、本人の承諾を得ずに勝手に放送受信契約を結んで成功報酬を懐に入れたり、BSチューナーを持っていない高齢者の契約を勝手に衛星放送受信契約に切り替えてしまったりというインチキが横行している、というお話である。

 「ま、どこの世界にもセコい小悪党はいるんだから、なにもそんな目クジラたてなくても……」と思う方もいるかもしれないが、そんなことはない。実はこの問題、日本のメディアに共通する“病”みたいなものなのだと思っている。

 このようなインチキを、ひと昔前によくやっていた業界がある。新聞だ。

 今から10年以上前、某Y新聞の「拡張団」にいた人間にインタビューをしたことがある。ご存じの方も多いと思うが、新聞拡張団とは販売店から委託されて訪問勧誘を行う人々で、拡張員は1つ契約をとるごとに「カード料」という成功報酬が支払われる。だから、みんな必死で巨人戦のチケットやら洗剤を手にして、住宅街を回っていたというわけだ。

 こういう人たちを取りまとめるのが団長だ。まだおおらかな時代だったので、Tシャツの袖から墨がチラッとみえるような方が普通に勤めていたりした。インタビューした団長も某広域暴力団の組員だった。自分自身が新聞記者に中途入社する前だったので、「インテリが作ってヤクザが売るってのはホントだったんだ……」とビックリしたのをよく覚えている。

 ヤクザといえば、生活保護だってパクろうという人たちだから当然、知恵を絞って新聞社からもカネを吸い上げようとさまざまなスキームを生み出す。そうしたパクりの技術は、オレオレ詐欺ではないが、まるで伝染病のように全国の販売店へと広まっていく。

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