ハリウッドのエンタテインメント性を支えている、オリジナルを中心とした脚本文化。米国人は、日本人がマンガを書くような感覚で脚本を書いているという。そのため、脚本家志望の人間が実に多く、層も厚い。実際、ロサンゼルスのレストランでバイトしている若者のほとんどは、役者か脚本家志望と言われているほどだ。そうした志望者たちが書く脚本の数は半端ではなく、大手映画スタジオや映像制作会社、タレントエージェンシーには毎週山のようなシナリオが投稿されてくる。
“山のように”と表現したが、これは決して誇張ではない。米国では脚本を読み切れないプロデューサーに代わってシナリオを読み、格付けするストーリー・アナリストという職業もあるのだ。シナリオの出来を評価するだけでなく、制作した場合の予算のめど、映像化の可能性もアドバイスするビジネスが米国では成立しているのである。
脚本大国の米国では、映画を始めとした作品を1人の脚本家だけで仕上げることはめったにない。何人もの脚本家が交互に、あるいは同時に作品に関わっている。
先ほどの2011年に公開した劇場アニメ作品を見ても、13作品でクレジットされている脚本家の数を合計すると実に100人になる。『カンフーパンダ2』と『Arthur Christmas/アーサーのクリスマス』は最少の2人で脚本を書いているが、『ライオンキング』はなんと29人が参加している。1作品平均7.7人の脚本家が起用されているわけだが、それぞれが相応の報酬が与えられた上でキッチリと権利処理されている。
タイトル | 脚本家数 | |
---|---|---|
1 | Cars 2/カーズ2 | 4 |
2 | Kung Fu Panda 2/カンフーパンダ2 | 2 |
3 | Puss in Boots/長ぐつをはいたネコ | 5 |
4 | Rio/リオ | 7 |
5 | Rango/ランゴ | 4 |
6 | Gnomeo and Juliet | 16 |
7 | The Lion King/ライオンキング | 29 |
8 | The Adventures of Tintin/タンタンの冒険 | 4 |
9 | HAPPY FEET 2/ハッピーフィート2 | 8 |
10 | Arthur Christmas/アーサーのクリスマス | 2 |
11 | WINNIE THE POOH/クマのプーさん | 12 |
12 | Mars Needs Moms/マーズ・ニーズ・マムズ | 3 |
13 | HOODWINKED TOO! HOOD VS. EVIL | 4 |
映画の本場である米国でヒット映画のオリジナル脚本を書くことは大変な名誉であり、かつ脚本料は日本の10倍以上である。脚本家にはマンガ家のように画を描く能力は必要とされないこともあり、「エンタテインメントが好きな米国人なら一度は脚本家になる夢を持つ」と言われるのもうなずける。実際、ハリウッドには脚本を書ける人材が非常に多く、プロデューサーであっても脚本家としてのクレジットを持っている人間がゴロゴロいたりする。
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