日本とはまったく違う!? 米国映画のマンガ原作はわずか1%(後編)アニメビジネスの今(3/3 ページ)

» 2012年08月29日 08時00分 公開
[増田弘道,Business Media 誠]
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脚本のクレジットに敏感な米国

 脚本大国の米国では、作品のクレジットに関しても敏感である。誰がオリジナルのストーリーを書いたのか、誰が最後に書き上げたのかなどが次の「脚本のクレジット例」にあるようにクレジットを見るだけで分かるようになっている。

脚本のクレジット例(『ハリウッド脚本術』参照)

  • Written by……1人のライターがストーリーと脚本両方を創造した時。すなわち、全体の作品が完全なオリジナルで、最終の撮影台本の形式に他のライターが一切寄与していない
  • Story by……ライターがストーリー(原作などのないオリジナル)を創造しているが、そのライターが脚本の最終バージョンを書いてはいない
  • Screen Story by……ライターが、新聞や雑誌の記事のような素材からストーリーを作っているが、その素材を一般的なアイデアや事件としてだけ利用しており、登場人物や出来事、展開はライターのオリジナルである場合。脚本の最終バージョンは書いていない
  • Screenplay by……ライターが脚本の最終バージョンを書いているが、その脚本は別のライターのオリジナル脚本あるいはオリジナルのストーリーなど、先に存在した素材に基づいている時

 ちなみに、クレジットの最高ランクは何といっても「Written by」だろう。脚本家なら一度は欲しいクレジットだろうが、前述の2011年の劇場アニメの例を見ても分かる通り、至難の業である。

 その点、日本の場合は1人でシナリオを書き上げる場合が多く、まさに「Written by」ではあるのだが、長年の慣習や予算の制約によってそうなっているというのが実情である。「もし複数でシナリオを書く余裕があるなら、かなりレベルアップするのでは」という推測は、故・黒澤明監督の脚本執筆の過程を考えれば容易に想像できることである(黒澤監督は数人の脚本家と一緒に旅館にこもり、時間をかけて脚本を執筆していた)。

 いずれにせよ、最近日本でもオリジナルのアニメ作品が増えているので、誰がオリジナルストーリーを考えたのか分かるようなクレジットにしてほしいと思うところである。

増田弘道(ますだ・ひろみち)

1954年生まれ。法政大学卒業後、音楽を始めとして、出版、アニメなど多岐に渡るコンテンツビジネスを経験。ビデオマーケット取締役、映画専門大学院大学専任教授、日本動画協会データベースワーキング座長。著書に『アニメビジネスがわかる』(NTT出版)、『もっとわかるアニメビジネス』(NTT出版)、『アニメ産業レポート』(編集・共同執筆、2009〜2011年、日本動画協会データーベースワーキング)などがある。

ブログ:「アニメビジネスがわかる


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