今や老若男女を問わず、愛されるようになったアニメーション。「日本のアニメーションは世界にも受け入れられている」と言われることもあるが、ビジネスとして健全な成功を収められている作品は決して多くない。この連載では現在のアニメビジネスについてデータをもとに分析し、持続可能なあるべき姿を探っていく。
年間を通じて最大の市場となる夏休みの映画興業シーズンが7月から始まる。今年はスタジオジブリ作品こそないものの、話題性十分の作品がいくつかある。次表は今夏の劇場アニメ公開リストだが、この中から注目作を取り上げてみたい。
タイトル | 公開日 | 配給会社 |
---|---|---|
グスコーブドリの伝記 | 7月7日 | ワーナー |
それいけ!アンパンマン よみがえれ バナナ島 | 7月7日 | 東京テアトル |
魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's | 7月14日 | アニプレックス |
劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ 「キュレムVS聖剣士」 | 7月14日 | 東宝 |
おおかみこどもの雨と雪 | 7月21日 | 東宝 |
スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン | 7月21日 | ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント |
メリダとおそろしの森 | 7月21日 | ディズニー/ピクサー |
劇場版 NARUTO THE MOVIE ROAD TO NINJA | 7月28日 | 東宝 |
マダガスカル3 | 8月1日 | パラマウント/ドリームワークス |
コードギアス 亡国のアキト | 8月4日 | ショウゲート |
映画ジュエルペット スウィーツダンスプリンセス | 8月11日 | 東宝映像事業部 |
マクダルのカンフーようちえん | 8月11日 | マジックアワー |
劇場版FAIRY TAIL 鳳凰の巫女 | 8月18日 | 松竹 |
放課後ミッドナイターズ | 8月31日 | ティジョイ |
今年の夏興業で一番の注目は、やはり細田守監督『おおかみこどもの雨と雪』だろう。東映アニメーションから独立して3作目にして、さらなるブレイクが見られるかどうか。
細田監督は実績は少ないものの、その内容には期待感を抱かせるのに充分なものがある。1作目の『時をかける少女』(2006年)は全国21館スタートながら大健闘、最終的な興行収入は2億6500万円となった。通常、この数字だと次回作にかかる期待値は前作の2〜3倍。しかし、3年後に公開された2作目の『サマーウォーズ』(2009年)はそれを大きく上回った。
『サマーウォーズ』は127館からのスタート。この館数だとかなりヒットしても興行収入は数億円が限界。ところが、『サマーウォーズ』は最終的に16億5000万円と、配給規模からすると異例の大ヒットとなった。
この数字は日本の劇場アニメにとって非常に重要な意味を持つ。なぜなら、興行収入が10億円を超えられるかどうかが日本の劇場アニメの分かれ道となるからである。
実は日本の劇場アニメで興行収入が10億円を突破しているのはスタジオジブリ、キッズ・ファミリー向けテレビアニメの劇場版、幸福の科学作品以外ほとんどないのである(『新世紀エヴァンゲリオン』の新劇場版シリーズも元はテレビアニメ)。
人気があると思われているアニメファン向け作品も、2004年の大作『イノセンス』(押井守監督、興収10億円)と『スチームボーイ』(大友克洋監督、興収11億6000万円)の公開時に分かった事実であるが、その市場はマックス10億円なのである。では、『千と千尋の神隠し』で証明された興収最大300億円の道を歩める可能性がある作品はどんなものなのか?
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