コラム
» 2012年08月30日 08時00分 UPDATE

相場英雄の時事日想:“カワイイ”が自然を殺す、北海道で見た人間の残酷さ (3/4)

[相場英雄,Business Media 誠]

冬を越せない

 キタキツネと遭遇した日の夕刻、私は釧路湿原に近い民宿に入った。ロビーの書架には、湿原の野生動物を撮った写真集が入っていた。女将さんにこの日接した事柄を話してみた。話を切り出した途端、女将さんが顔をしかめた。

 「お客さんみたいに感じてくれる観光客は残念ながら少数派です」

 聞けば、この宿に泊まる客のうち、相当な数の人がキタキツネに遭遇した際、エサをあげてしまうのだという。

 「キタキツネは本来肉食性なので、スナック菓子やおにぎりで体を壊してしまう個体が多くて」

 本来、キタキツネは野鼠などを食べているという。だが人間が食べるスナック菓子は塩分や糖分が強く、キタキツネにとっては下剤に近い刺激の強い食物だとか。

 「疥癬(かいせん)と言う皮膚病にかかって、毛が抜けてしまうキツネが最近急増中です」

 この病気にかかれば、毛が抜け落ち、やせ細ってしまうという。

 女将さんの表情がさらに曇った。私が道東を訪れたのは8月初旬。首都圏は連日猛暑日を記録していたが、この地は20度程度。朝晩は15度以下になる。冬はいうまでもなく氷点下であり、マイナス20度超の日が続く。

 こうした過酷な冬の時期に、毛が抜けてしまったキタキツネがどうなるかは想像に難くない。私は撮影した写真を女将さんに見てもらった。

 「病気になりかかっているようですね」との答え。

 女将さんが子狐の尻尾を指し、言う。

 「キタキツネの尻尾は本来、太くてふさふさしているんです。でも、雨中で毛がしぼんでいることを割り引いても、この子の尻尾は明らかに細い」

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