日本のプロ野球や米メジャーリーグを中心としたスポーツ界の裏ネタ取材を得意とするライター。WBCや五輪、サッカーW杯など数々の国際大会での取材経験も豊富。
日本の第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)への参加が紆余曲折の末、9月4日に決まった。7月に不参加を表明した日本プロ野球選手会が再協議を行い、これまで主張し続けてきた日本代表(サムライジャパン)のスポンサー権が認められたことなどを理由に不参加表明を撤回したのだ。
大会2連覇を成し遂げたサムライジャパンの激闘を再び目にすることができるのは喜ばしい限りだが、今回のWBC参加に至るまでの経緯を見ていると、スッキリとした気になれない方々も多いのではないだろうか。
そもそも選手会が大会参加に難色を示し続けていたのは、主催者側のWBCI(MLBとMLB選手会が共同設立した事業会社)に多くの利益が転がり込むWBCのシステムに異を唱えていたからだ。
過去2大会ではスポンサー収入の約70%が日本からもたらされているにもかかわらず、収益配分はWBCIが66%に対して日本はわずか13%。これに選手会が猛反発し続けた結果、前記したとおりにサムライジャパン独自のスポンサー権などは日本側へ帰属することが確認されたが、これはあくまでも「再確認」だ。
日本側がもともと持っていた権利に関して「どうぞご自由に多角化展開してください。ただしルールの範囲内で……」と言われただけで、実はMLB側が譲歩したわけではない。言うなれば、日本が新たに見つけた金脈には目をつぶってあげましょう……という程度のことだ。
MLBに認めさせたとされるサムライジャパンのユニホームのスポンサー料も実際のところは日本ラウンドの興行権を持つ読売新聞社がWBCIから権利を買い取ってNPB(日本プロ野球機構)に還元する仕組みになっている。
次のWBCで日本が不出場となれば、当然ながら読売側にとっても大きな痛手。だからこそ、サムライジャパンの参加を熱望した読売がNPBへ多くのスポンサー収入が転がり込むように譲歩したのである。そう、MLBは何の譲歩もしていない。日本が求めていた「分配金の増額」は認めていないのが実状だ。
第3回WBCは1次ラウンドから2次ラウンドの準々決勝まで最大7試合が日本国内で行われるという。日本で行われる試合数が過去2回の大会よりも大幅に増えた格好だが、これも冷静に見ればMLBが日本の総収益を上げることで疑念を抱かれている核心部分から追及の目をそらしただけのこと。巧みな「すり替え戦術」といえるだろう。
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