インタビュー
» 2012年09月27日 11時00分 公開

「プロゲーマーという職業に希望を」――格闘ゲーマー・梅原大吾氏の挑戦 (4/5)

[堀内彰宏,Business Media 誠]

先入観が人の成長を妨げる

――とてもうまい人とうまい人の差別化要因はどこにあるのでしょうか。

梅原 それも(リリースされてからの)時期によりますね。序盤であれば正確な理論を構築するスピードが速い人が有利ですが、後半であればリアルタイムの勝負なので、反射神経や技術の正確さ、あとはメンタルの部分が求められますね。ゲームが出た時期によって、強者の条件というか、必要な要素というのは変わってきます。

――スタートダッシュという話がありましたが、初めてプレイするゲームをどのように極めていくのでしょうか。

梅原 それもゲームによって違いますが、経験から来る、いくつかの法則があると思います。こういう要素を揃えている戦法やキャラクターが強いとか。それを軸に徐々にそのゲーム用に変化させていくという感じですかね。

 例えば、2D格闘ゲームであれば、地上を歩く行為としゃがむ行為と飛ぶ(ジャンプする)行為ができるのですが、飛ぶ行為は基本的に弱く作られているんですね。絶対そうというわけではないですが、そういうものが多いです。なので、「飛ばずにどうすれば勝てるだろうか」というところを最初にみんな考えます。

 あとは「どうやってガード(防御)を固めている相手を崩すか」とか。実際の格闘技と違って、ガードしているところに攻撃しても、相手の体力は減らないんです。もし格闘技の世界だったら、ガードしていても、蹴られたり、殴られたりしたら痛いと思うのですが、そういうのがないので、「じゃあどうやってそのガードをこじ開けるのか」という工夫だったりというところを開発するのが早い人が強いですね。

――格闘ゲームを極めていく時にこんな方法を使っているとか教えていただけますが。ビジネスパーソンでも仕事に応用できるものがあると思うのですが。

梅原 自分がほかのプレイヤーと違うなというところは、まず先入観がないことですね。先入観はないし、「自分の考え方が正しい」というのも持たないようにしているので、現実に起こっていることを素直に受け止められるのは、ほかのプレイヤーに比べて強みかなと思います。こだわりやプライドといったものが入り込んでいないので。

 それは仕事でも、新しく方針が変わったり、環境が変わったりした時、より早く対応するために必要なことだと思います。

――何でこだわってしまう人が多いんでしょうね。

梅原 「今までやってきたことが意味のあることだった、と思いたいんだ」と、自分は勝手に思っています。キャリアがあるから、そのキャリアをちょっとでも生かして有利に周りの人と競いたい、そういうエゴのようなものが入ってしまうと、新しいものを一から競争した時に不利ですね。

――ほかにどんな取り組み方がありますか。

梅原 今の自分は「先に進む」ということを実感することが最優先なんですね。「今日はどれくらいやった」という時間による満足ではなくて、明確に「ここは成長できた」と言葉にできるくらいのはっきりとした前進や成長があれば、それがほんのちょっとだったとしても良い取り組みだと思っています。

 「練習の仕方が上手ではないな」と思う人は、練習時間にこだわってしまったり、数をこなすことで逆にそこに安心しようとしてしまう傾向があります。わずかな成長であっても、今日どういう成長ができたかというのを明確に実感できている方が、長い目で見れば先に進めると思っています。

――1日の練習は、成長したと思えるまでやるんですか。何も成長がなかった日はどうするんですか。

梅原 課題を持って努力していれば、何もないということはないはずなんですね。本当に小さなことでも良ければ、成長しているはずです。成長というのは、例えばアスリートでいう筋力が増したというようなことだけではなくて、今まで知らなかったことを知ったというだけでも成長だと自分では思っているので、それがどんなに小さいことでも成長しているということを大事に考えています。

――最近の一番の発見は何ですか。

梅原 格闘ゲームというより、『ガンスリンガー ストラトス』での発見ですね。4人対4人のゲームなのですが、今まで集団でやる競技はやったことがなかったんです。全然勝手が分からなくて、すごく苦労したのですが、多人数対多人数という勝負でのコツといいますか、そういうものはこの歳になってようやく理解しました。サッカーも野球もやってこなかったので、それはすごく自分にとって大きな成長だと思いました。

――具体的にどういうあたりですか。

梅原 自分を駒として見るということですかね。今までだったら、「自分が勝てばいい」と考えていたのですが、局地的な勝負で勝っても、全体が負けていたら多人数対多人数では負けてしまいます。局地戦での自分の勝ち負けへのこだわりを一切捨てて、チーム全体にとって何がプラスなのかを意識する、ということをこの歳になってようやく身に付けました。

――マークさんは、梅原さんは何が違うと思いますか。

マーク まず、今まで彼がやってきたゲームを見ていて、ずば抜けて勝っているところです。後はミラクルというか、逆転劇であったりとか、人が見たいと思わせる力というのがありますね。

――逆転するために、自分の中で(体力が少ないと仮定して戦うなど)縛りを決めた練習とかはしていますか。

梅原 そういうのはやらないですね。逆転というのは別にやろうと思ってやるわけではなくて、いつも通りやった結果、逆転が起きるというだけなので。

背水の逆転劇

※梅原氏が操作する男性キャラクターが残り体力がほとんどない状況から大逆転を果たした試合。関連動画の視聴数は2000万回を超える。

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