昨年来、私は東日本大震災や福島第一原発後の東北地方を取材し続けた。特に、福島県の浜通り地方、そしていまだに不自由な避難生活を強いられている15万人以上の住民の苦難の一端を知る者としては、同リポートに強烈な違和感を持つ。いや、むしろ嫌悪感に近い。
ただ、先に当欄で『それでもオスプレイは配備される――そう感じるワケ』という記事でも記した通り、日米の力関係は明確に米優位なのだ。
正式な米政府見解ではない『アーミテージ報告書』にしても、政府が「2030年代に原発稼動ゼロ」とするエネルギー・環境戦略について、9月の閣議で閣議決定を見送ったことに大きく関係するとみる。
ここからは裏の取りようのない話となる。予めご了承いただきたい。
過日、私は重電やプラントに詳しいベテランの証券アナリストを取材した。この際、件の『アーミテージ報告書』が話題に上った。このとき、アナリストがこんな話を始めた。「例のリポートの背後には、こんな事情が絡んでいるよ」――。
こんな事情とは、以下のような内容だ。
当初、政府が2030年代の原発ゼロ方針を示した直後から、原発関連のエンジニアが関連する企業から離職する動きが強まった、というのだ。
このアナリストがいくつかの国内有数の企業に取材したところ、「正確な数は得られなかったが、優秀なエンジニアが海外企業に移籍しているのは事実」との感触を得たという。私もいくつか当たってみたが、守秘義務や個人情報の壁があり、どの企業から何人、といった精緻(せいち)なデータを得ることはできなかった。ただ、アナリストと同様に感じたのは、流出は紛れもない事実、ということだった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング