1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo
「日本は原子力発電を放棄してはいけない。原発の慎重な再稼動こそが、日本にとって責任ある正しい選択である」――。
今年8月、米戦略国際問題研究所のアーミテージ元国務副長官やナイ・ハーバード大教授らが中心となってまとめた『アーミテージ・ナイ報告書』がこんな一文を盛り込んだことをご記憶の向きも多いはず。反原発ムードが高まる日本で、同リポートが話題を集めたのは言うまでもない。今回は、同リポートの背後に潜むある意図について分析してみたい。
私が指摘するまでもなく、アーミテージ氏は米国政界での影響力が大きい知日派と知られる人物。同氏は過去も日米関係に関するリポートを記し、これが日本の政治に大きな影響力をもたらしてきた経緯がある。
先のリポートは、日米関係全般を俯瞰(ふかん)し、今後の両国関係のあるべき姿、という位置付けとして発表された。
原発に関する一文もこの中に含まれる。各種メディアのリポートから、この部分に触れてみる。
「日本は原子力発電を放棄してはいけない。原発の慎重な再稼働こそが、日本にとって責任ある正しい選択である。日本がロシア、韓国、フランス、そして中国に立ち遅れる事態はさけるべきであり、日米両国は連携を強化し、福島原発事故の教訓に基づき国内外における原子炉の安全設計および規制の実施面でリーダーシップを発揮すべき」
先に指摘した通り、アーミテージ氏は米国政界の歴然たる有力者であり、「知日派として日本政界への影響力も大」(永田町関係者)であることは間違いない。
それだけに、日本の原発政策に関して、これを強く維持するよう求めた同リポートが関心を集めたわけだ。折しも反原発のムードが高まり、首相官邸の周囲をデモ隊が取り囲んでいた時期にも当たるだけに「露骨な内政干渉」、「やはり日本は米国の属国だった」等々の批判が渦巻いたわけだ。
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