ZOZOTOWN騒動に見る、「送料無料」のツケは誰が払うのか?窪田順生の時事日想(2/3 ページ)

» 2012年11月06日 08時02分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

 通販業者が宅配業者に発注をして、荷を届ける宅配ドライバーがいる。これだけの流れにまったくコストがかからないわけがなく、誰かが何かでこのカネをひねり出すために泣いている。商品を卸している人なのか、通販業者なのか、あるいは宅配業者なのかは分からないが、どこかで「タダ」にするための帳尻合わせをするのだ。

 それが“経営努力”というものじゃないか、企業は稼いでいるんだからお客さまに還元しろよ、と思うかもしれないが、この帳尻合わせの皺寄せはまわりまわって結局、消費者のところに戻ってくる。

 分かりやすいのが“価格競走”だ。消費者からすると商品もサービスも安ければ安いほうがいいに決まっている。100円よりも90円がいいし、1円よりもタダがいい。牛丼でもフリースでも、どんどん安くなっていくが、本当に消費者が得をしているのかという問題がある。

企業への不利益、消費者にも不利益

プレミアムローストコーヒー。価格は100円

 価格競争の事例として、マクドナルドを思い浮かべた人もいるだろう。10月10日に掲載された産経新聞の記事でも紹介されているが(関連記事)、かつて日本マクドナルドは「59円バーガー」を売り出したことで、ハンバーガーの価値を自ら落とし、結果として赤字転落を余儀なくされた。

 原田泳幸がCEO(最高経営責任者)に就任してからは好調で、4分の1ポンド(通常のビープパティの約2.5倍)の肉を使ったクォーターパウンダーなどで「価値」の創造を目指したが、“安さ”に取り憑かれた消費者は貪欲だ。もっと安く、もっと安くという声におされて100円で買えるラインアップが増え、ついには無料のプレミアムローストコーヒーをふれまわらなくてはならなくなった。さらに最近では「お客様のご要望に応え」て無料のハンバーガーまでふるまわっている。その結果が、つい先日発表された店舗の大量閉店である(関連記事)

 マクドナルドに“安さ”を求めてきた消費者の声に応じてやってきたら、「ようやくウチの近所にもマックができたよ」と喜んでいた消費者を落胆させることになってしまった。つまり、企業に「おまえたちが泣いとけ」と不利益を強いると、まわりまわってそのツケはユーザーにもまわってくるというわけだ。

 企業は求められたものを何でもだせる“ドラえもん”ではない。タダや値下げのツケはまわりまわって必ず消費者のもとに戻ってくるのだ。

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