こういう循環の視点があまり語られない一番の理由は、実はマスコミにある。大手メディアがそろいもそろって「財政再建は消費税増税しかない」と言い出していることからも分かるように、彼らに“カネは天下の回りモノ”という観念はない。
税金をあげたら国民は強制的に徴収されて以上終了。ではなく、強制的に取られた分は国民はどこかでそれを補おうとする。つまり、消費を抑制する。ということは、景気が悪くなるので企業の業績も悪化するので、税収も減る。
財務省としては、こういう経済観念をあまり庶民にもってもらいたくないというのが本音だ。カネというのが実は人体を流れている血液のようなもので、グルグルと流れているうちは健全で、流れを止めた時に破たんが訪れるということを、市井の人々に理解されると、財務官僚のお題目である「日本の財政は破たん寸前でいつギリシャのようになってもおかしくない」というのが、ノストラダムスの予言並にうさん臭いぞということがバレてしまうからだ。
消費者が無秩序に企業を攻撃すると、やがてそのツケが自分たちにまわってくるので、消費者に「市場の原理」を気づかれる。だから、少し前には「消費者庁」なんてワケの分からない役所をつかって、消費者問題をコントロール下に置こうとした。中国共産党が毎年3月15日を「消費者の日」と定めて、公共放送などに目立った企業の吊るし上げをさせているのと狙いは同じだ。
送料がタダになる。通話料もタダになる。確かに素晴らしい響きだが、“タダ”をつきつめていくと最終的には、儲けた連中は貧しい者に富を分配せよということにならないか。
英国のことわざに「地獄への道は善意で敷きつめられている」というのがある。地獄とまではいかなくとも、“なんでもタダ”の先は、あまりまもとな未来が待っているとは思えない。
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