街おこしをしたい、街に人を呼びたい、といったニーズは全国各地に存在しています。しかし、イベントや博覧会などでの集客を成立させるのは難しくなっています。大阪万博の6421万人、愛・地球博の2204万人などはケタ違いとして、地方博覧会になると、赤字になっているものも珍しくありません。都市計画や大規模商業施設の計画立案の現場では、企画とアイデアで人を集めることの限界がしばしば語られます。
東京駅の利用者数を一種の来場集客数として計算してみましょう。東京駅の利用者数はJR東日本だけで1日約38万人。JR東海の9万人、東京メトロの15万人を合わせると約62万人。1カ月30日積算で1860万人、それに12カ月をかけると概ね2億2320万人に。ざっくりとした延べ人数ですが、日本の人口を超えてしまいました。もちろん、これは単年度の数字なので、多少の上下はあっても毎年同じくらいの人が行き来します。
約2億人のうちの何%かは、ちょっとした買い物をしたり、ご飯を食べたり、お土産を買ったりします。移動のついでに立ち寄るのではなく、東京駅にレジャーとしてやって来る人もいるでしょう。このように東京駅は経由地としてだけでなく、目的地としての魅力度も高く、小売業の立地としてはヨダレの出る環境です。
実際の動向を直近の決算資料(2012年3月期期末、PDF)で確認してみると、ショッピング・オフィス事業は手堅い成長を示しています。こちらの数字は集客数そのものではないですが、概ね傾向感触をつかむには良い数値指標です。
ステーション“シティ”という戦略キーワードが示すように、JR東日本が提供しているのは、駅を単なる通過点としてではなく、滞在して過ごせる場づくりとインフラ整備です。駅ビルをつくって誰かテナントに入ってもらうために駅前の広場やバス停くらいはそろえましょうというレベルではなく、ショッピングセンター的な総合消費を狙っています。例えば、東京駅のテナントに大丸が入って、その中のテナントに有名なお菓子屋さんが入って……といった構図は、まさにショッピングセンターとよく似ています。
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