本屋が私を育ててくれた――小さなアドバイスで恩返し郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2012年11月22日 12時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 物心ついたころから筆者の遊び場は本屋だった。

 大きな本屋にも神田神保町の古本屋街にも通ったが、じっくり本を学んだのは近所の小さな本屋たちだった。私なりに区分はあった。A店は文庫本探し。読めと語りかける背表紙に会うまで粘った。B店は雑誌立ち読み。C店は古本屋でペリイ・メイスンシリーズなどのミステリー探し。家から離れた小さなD店には、エロ本を買いに行った。背が高かったので大学生ヅラして<未成年お断り>を買った。にらまれてドキドキ。帰り道で袋の上からヌードを見てニヤリ。

 本屋からスタートしたことはたくさんある。

 絵本や付録付き幼児雑誌を買ってもらい、自分で漫画を買いだし、辞書や参考書も買った。パソコンもネットも本屋から始まった。ホームページも本屋でつくったようなもんだ。旅は本屋から始まった。ラブレターも女体も本屋で教わった。企画発想も資格挑戦も転職も、本屋に起点があった。

 その本屋がどんどんなくなっている。

本屋 自宅そばのどこにでもあるような本屋

 本屋は「1日1店閉店産業」といわれる。少ない月で20店、多い月では60店が閉店(2011年11月〜12年10月)した。10年前と比べておよそ4000店の減少で、まさに1日1店潰れている。総店舗数は減る一方、売場面積は過去10年で3割増えた。新規開店は大手ばかり。

 さらに電子書籍市場が本格化する。楽天の「kobo」、ソニーの「Reader」、凸版グループの「BookLive! Reader Lideo」、アマゾンの「Kindle」、そしてiPad miniと出そろい、今年は電子書籍市場元年になりそうだ。まだ日本語タイトルが不十分とはいえ、リアル本はますます売れなくなる。

 大手書店には品ぞろえで負け、雑誌はコンビニへ流れ、便利さでネットに負ける町の小さな本屋さん。私を育ててくれたご恩で、業界の取り組みを整理し「復活のアイデア」を考えてみたい。

売場から楽しむ場へ

本屋 東京堂の巧みなレイアウト

 「東京堂書店」(神保町)は2012年のリニューアル以来、来店客が多い。なぜだろうか。1Fから3Fまで各階に置いたカフェからは、「売る場」から「楽しむ場」へ書店の転換が見える。レジを1Fに集中させるのはそういう意味もありそうだ。品ぞろえにメリハリをつけながら、売場は落ち着いている。

 ギャラリーや著者トークショーなどを開催する6Fホール(93平方メートル)も「文化の発信源」の理想がある。同店のサテライト店、ハス向かいの小さな本屋は「シェ・モワ」となり、女性にターゲットをしぼった改装をした。

 売るから楽しむへ、あれこれから絞るへ。小さい本屋にもできそうだ。

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