いまや書店に入ればPOPは当たり前だ。「書店員のおすすめPOP」が平置きや棚にある。POPを競う業界コンテストもある。POPは本との出逢いを導いてくれてありがたい。大手書店「ジュンク堂」のWebサイトには「書店員の超おすすめ本」リストもある。
だが「書店に来てくれてナンボ」である。大書店と違い小さい本屋の問題は「立ち寄りの減少」である。がんばって書いてもどれだけ効果的だろうか? もうひとひねりほしい。
「紀伊国屋書店新宿本店」の「本の闇鍋」フェアはおもしろかった(2012年夏)。本の書き出しだけをデザインした手作りカバーに密封して本を販売。開けて中身と初めて出逢うという演出でヒットした。
最初の一行には著者の思いが詰まっている。それが響けば中身も響く。ヘタに感想文で誘導するより、本という商品の本来の魅力を前面に出した。しかも包んで中身を見せないという「暴挙」がいい。人は「本を知って買う」のではない。何が読めるか分からない、でも期待できそうだ。だから買う。
千駄木の小さな書店「往来堂」の品ぞろえ、陳列にはうならされる。文庫新書という本の種別でもなく、ジャンルでもない。「関心」がどんどん広がる仕掛けがある。どうやら「核となる本」から、各コーナーの書籍――雑誌、ムック、文庫、単行本――を自由に組み立てている。
長野駅から善光寺へ上り坂の途中に「遊歴書房」という小さな古書店がある。地元の建築家らが元ビニールハウス製造工場を改装した建物の一角。その並べ方は「世界をめぐる」コンセプト。西から東へ、アジア、米国、欧州……と、小さなスペースなのに世界一周ができる。しかも、どれも手に取りたくなる品ぞろえ。
この2店には「買わされた」。本屋ってコンビニエンスストアだろうか? 見つけて買ってサヨウナラ。違う。思想商品なのだから、売りにも思想があるべし。出版社や取次の営業マンから仕入れる思想は受け売りだ。店主自身の思想を見せてほしい。
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