相撲鉄道ではなく、相模鉄道をどうする? 路線には「戸籍」と「通称」がある杉山淳一の時事日想(2/4 ページ)

» 2012年11月30日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

鉄道路線にも「戸籍上の名前」と「通称」がある

 愛称や通称を持つ鉄道路線が増えている。愛称・通称というからには「本名」もあるわけで、これは鉄道会社が国に届け出た路線名である。鉄道ファンは「線路の戸籍」とも呼ぶ。路線の通称の歴史は意外と古く、山手線や京浜東北線もそうだ。山手線の戸籍、つまり国に届け出た路線名の区間は「品川―渋谷―新宿―田端」である。これ以外の「東京―品川」は戸籍上は東海道本線で、「東京―田端」は東北本線である。でも電車はそのまま乗り入れるから、通称「山手線」のほうが分かりやすい。

 「京浜東北線」は全区間が通称だ。戸籍上は、東京から北が東北本線、東京から南が東海道本線である。でも、停車駅も多いし、独立した線路を使っている。本名より通称のほうが便利だ。

 都心では「乗換の案内に便利」という理由でつけられた事例が多い。東京エリアでは東北本線の「上野―宇都宮―黒磯」を「宇都宮線」という。これは1990年からだ。新幹線開業で長距離列車が減り、近距離列車ばかりになったという事情があったという。

 JR西日本は近畿圏で1988年からJR京都線、JR神戸線という通称を使っている。東海道本線と山陽本線の境界が神戸のため、従来は大阪駅の乗車案内はどちらの方向も「東海道本線」だった。通称のほうが行先をイメージしやすい。

 通称の効果が最も高い路線は「湘南新宿ライン」だろう。この愛称を正式名称で表すと、「東北本線・高崎線・赤羽線・山手線・東海道本線・横須賀線」となる。そのまま使うとホームの案内や路線図に書ききれない。落語の寿限無(じゅげむ)になぞらえると、車内でケンカをしてこぶを作っても、調書を取る段階で路線名を何度も言ううちに引っ込んでしまい立件できなくなる。

 それに比べて「湘南新宿ライン」は分かりやすい。池袋から北の地名がなく残念に思う人もいるかもしれない。しかし、もともと池袋発着の高崎線・宇都宮線を統合した経緯がある。それらの名前を残すよりも、むしろ上野発着列車と区別しやすくなった。

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