北朝鮮のミサイル脅威にどう対処するべきか藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2012年12月03日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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 それでは米軍に頼んでミサイル基地を攻撃してもらうことは可能か。しかし、問題は2つありそうだ。1つは、まだ戦争状態になっていないケースで、米軍が日本を攻撃する可能性が高い基地を先制して叩くのは難しい。もちろん日米安全保障条約第5条に基づく米軍出動はするはずだが、それはあくまでも日本が攻撃を受け、自衛隊が戦闘状態に入っている場合を想定している。

 第二に北朝鮮の場合、今回の発射基地は黄海側だ。ということは中国ののどもとにあたる。そこまで米軍の機動部隊が行って、巡航ミサイルなどを使ってというのは、中国の存在を意識すればあまりにもリスクが高い。日本が何の被害も受けていない状態で、対中関係までリスクにさらして米軍が出動することはありえないと思う(もちろんこれは今の状態を前提とした話である)。

 結論は、北朝鮮のミサイルに対して、日本はあまりにも無力であるということだ。北朝鮮が今の体制でミサイル開発や核兵器開発を放棄するというのもちょっと考えにくい(経済的に崩壊してしまえば別かもしれないが、そのときにはより不安定な国になってしまう可能性が高い)。核開発を放棄すれば、アメリカに対する交渉力が失われるからだ。ましてリビアやイラクのことを考えれば、金正恩が核兵器開発を断念するのはリスクが大きすぎると考えるだろう。

 そうなると、日本の防衛を根本的に考え直す時期に来ているということかもしれない。専守防衛という理念は、美しいかもしれないが現実的ではなくなっている。敵地攻撃能力を整備することが憲法違反かどうか、もし憲法違反ならば憲法を変えても整備するのかどうか。問われるのは、戦後の「恒久平和」というぬるま湯に浸ってきたわれわれの覚悟である。武力は、戦争するためのものというだけでなく、戦争を抑止するためのものだ。

 北朝鮮のミサイルが飛ぶこの時こそ、こういった問題を冷静に考えるチャンスだと思う。

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