マングローブ社長。設立以来15年、企業経営にあたりつつ、自らも第一線のコンサルタントとして、主に組織変革コンサルティング、経営幹部教育プログラムや管理職研修のファシリテーション、企業理念構築や経営ビジョン構築ワークショップのファイシリテーションなどを担当している。企業からはもちろん、昨今は自治体などからの要請による組織変革に関する講演も多い。著書に『マングローブが教えてくれた働き方』『稼ぐチームになるためのすぐやるリーダーの仕事術』がある。
企業運営がさまざまな要因で順調でなくなった時、それを立て直していく過程で最も重要なことは、リーダーシップのあり方である。
企業運営は大雑把に分けて考えて「リーダーシップ」「マネジメント」「オペレーション」の3つの段階が存在する。
リーダーシップとは、経営トップがすべき企業の方向付けや、全社的戦略の打ち出し、分岐点に差し掛かった時の大きな意思決定、そして関係する人々をその気にさせていく旗振り役という役割のことである。
マネジメントは、トップと社員の間に位置し、企業の目的を達成するために分担された部門の役割を、与えられた経営資源を使ってPDCAを回して実現に至らしめる活動のこと。
そして、オペレーションは顧客との第一線で実際にサービスを提供したり、それが円滑にいくようにバックアップする支援部隊などのこと。
さて、企業の立て直し、とりわけ組織変革に取り組む際にリーダーシップが侵しがちな失敗を上げて企業トップ諸氏の心構えを促したい。
ご紹介されて経営者にお会いして一番多いケースは、ご自分の手元に詳細に分析された企業内のほぼすべての課題が記載された課題レポートがあるということ。これらの複雑にからまった諸課題の優先順位や、ロードマップが混沌とした状態になり、暗礁に乗り上げている状態である。
そして、その内容についてご質問すると実に詳細まで把握されていることに驚かされる。しばらく会話した後、私がこう質問する。
「ところで社長、御社のうまくいっている点についてここでまとめてみたいのですが、どうでしょうか?」とお尋ねすると、しどろもどろとは言わないが、課題やうまくいっていないことについて語っていた時とは別人のような状態になってしまうのだ。
倒産しているわけでもなく、下がり続けているとは言っても、まだまだ有力なお客さまはいて、売り上げも毎月計上できている。
そんな会社にうまくいっていることが何もないということはありえない。ただ、課題やうまくいっていないことの整理に追われ、うまくいっていること、強みへの認識が薄くなってしまっているだけなのである。
これは実に危険な状態であることを認識しなくてはならない。苦境を乗り切り復活していくための言動力は、今現在うまくいっていること。持っている能力を使ってしかありえないのである。
経営者の口癖の1つに「うちの社内は危機感がなさ過ぎる」というものがある。「うちの社内は危機感にあふれているんだ」という経営者にはあまりお会いしたことがない。どうしても役員から新入社員まで一律に自分と同じレベルの危機感を持つことを期待してしまう。立場が違う以上それはあり得ないので、経営者は常に社内の危機感に不満な状態になるのである。
立場に関係なく全社に同じ度合いでの危機感を与えてしまうと、会社の先行きや自分の立場への不安が強くなってしまい、目の前の仕事に集中できないばかりではなく、持っている力を出し切れない環境になってしまう。危機感は、責任と権限とリンクした分量で分担されるべきものなのである。
過度な危機感を与えず、適度な危機感の中で一方で将来への希望も失わせてはならない。平時のような中長期のビジョンを描くことは難しくても、3年後などのタームで、「再度このような会社を目指したい」という目指す姿を社内に提示しなくてはならない
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