国内初のデジタル輪転機、なぜ講談社は導入したのか(2/4 ページ)

» 2013年01月29日 12時47分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

デジタル輪転機を導入した理由

――2012年の返品率も下がりそうか?

梅崎:まだ最終的な数字は固まっていないが、11月末現在で37.5%くらいだと見ている。なぜ増えたかというと、昨年100万部を超えたのは、阿川佐和子さんの『聞く力―心をひらく35のヒント』(文春新書)しかなかったから。返品率はベストセラーがたくさんでてくること減少し、昨年のようにベストセラーがあまりない場合は増加する。2011年の返品率が下がったのは入荷制限もあったが、『謎解きはディナーのあとで』(東川篤哉、小学館)などベストセラーがいくつもあったことが大きい。

 初版から重版がかかる割合は、だいたい30〜50%。そうした本は売れ行きがいいので、80〜90%の割合で売れる。しかも部数が多い。一方、初版のみで終わった本の売れ行きは50%ほど。新刊本の半分くらいは、半分以上売れずに市場から消え去っていく運命になっている。

――なぜインクジェット式のデジタル輪転機を導入したのか?

梅崎:オンデマンド(1冊ずつ必要な時、必要な分だけ本を作っていく方式)で古い本を復刻させて売る――というサービスを行っているが、定価が変わるし、紙も変わる。こうした構造なので、出版社としては収益を上げることが難しい。ただ新しいシステムを使えば、ほぼ同じ価格、ほぼ同じ重さの紙でできる。またオフセットと同じ色味、厚みの用紙を使用できる。本の厚みや重みが変わってしまうと、取次会社はトラックの手配などを変更しなければいけなくなる。なので重さなどが違ってくると、同じ製品として扱ってくれなくなるのだ。

 また新システムを使えば、ペラではなく、折で丁合(ちょうあい)して製本できることも大きい。オンデマンドで本をつくると、ペラになってしまう。なぜペラがダメかというと、ペラは紙を重ねていくのでどうしても静電気が起きてしまう。また製造工程の中でページが落ちてしまうことがある。一方、折の場合は「本の厚みはどうか」「曲がりはどうなっているか」といったチェックができるので製品に対する自信がもてるのだ。

講談社ふじみ野デジタル印刷製本工場

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.