無免許運転で4人を殺しても“過失”? 「法」と「常識」はなぜかけ離れているのか窪田順生の時事日想(1/3 ページ)

» 2013年03月05日 08時02分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 京都府亀岡市で無免許の18歳少年(当時)が軽自動車で集団登校中の子どもたちの列に突っ込んで、2人の小学生と母親1人が亡くなった事故の裁判で、京都地検が控訴をした。

 2月19日に下された判決は、懲役5年以上8年以下の不定期刑。これはいくらなんでも軽過ぎるんじゃないの、マスコミからは「常識からあまりにもかけ離れた判決」なんて取り上げられたが、それよりも物議を醸し出したのが、遺族側が強く求めていた「危険運転致死傷罪」が適応されななかったことだ。

 16歳からバイクを無免で乗りまわし、ネットのプロフィールには「趣味はドライブ」なんて書いていたこの少年は前日からほとんど寝ないで遊び回りウトウトしているうちにアクセルを踏み込み、制限速度40キロの狭い道を歩く小学生たちを時速50キロではね飛ばした。亡くなった母親は妊娠中だった。法律的にはまだ「人」にはカウントされないが、彼は4つの尊い命を一瞬で踏みつぶしたということになる。

 誰がどう見たって「危険運転」じゃないかと思うかもしれないが、“法律のプロ”に言わせるとどう考えても「危険運転致死傷罪」にはならないらしい。

 まず、そもそも「居眠り運転」は「過失」なのでこの罪の構成要件ではない。だったら無免はどうなのさ、「危険運転致死傷罪」の中に分類される「未熟運転」にあてはまるじゃねえか、と一般人の感覚では思うが、これも検察はバッサリと斬り捨てた。

 少年には運転技能が認められ、危険運転致死傷罪の適用条件である「未熟運転」にあたらない――。

 かなり納得感の薄い説明だが、「趣味がドライブ」だけあって事故る前はちゃんと運転をしていたので未熟じゃないというのだ。無免という悪質さについては、「それとこれは話は別でしょ」となる。

 つまり、法曹界の方たちから言わせると、世間からああだこうだと批判をされているが、この裁判官はまあそこそこに妥当な判決をしている、ということになる。いや、妥当どころか、重いなんて意見もあるぐらいで事実、少年側の弁護士も控訴している。

悪質交通事故をめぐる法制度に、疑問の声が上がっている(写真と本文は関係ありません)
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