なぜ「監獄ビジネス」が拡大しているのか――背景にあるのは窪田順生の時事日想(2/3 ページ)

» 2013年03月19日 08時05分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

 ほとんどは窃盗で入ったようだが、窃盗が本当に悪いことかもわからない。果たして、裁判所は責任能力というのを真剣に判断したのかと疑問が浮かぶな。判事も検事も面倒くさくて機械的に処理したのではないか。弁護士だって国選だからカネにならん事件はさっさと終わらせたい。この人は刑務所じゃなくて精神病院に行くべきじゃないの、というのが多いのはそれが理由だろう。

 平成23年度、刑務所に入所した「新受刑者2万5499人」のうち、中度の知的障害とされる「知能指数49以下」は957人。軽度とされる受刑者も4575人いた。この傾向はこの近年そんなに大差はない。つまり、刑務所にやって来る人の2割は知的障害者ということになる。このような人々のなかで、貧しさや生活環境から犯罪を繰り返してしまう、いわゆる「累犯障害者」が近年注目を集めたことで、刑務所が「福祉」の役割を担っているという歪んだ現実が明らかになったが、そこには身寄りのない高齢者たちも含まれるというわけだ。

 よく刑務所は社会の縮図といわれる。シャバが高齢化社会になるのだから当然、塀の中もそうなる。出所をしたところで仕事もない。待ってくれている家族もいない。ムショのなかなら罵声を浴びることを我慢すれば、栄養士が考えてくれたメニューを3食いただけるし、同じ房の仲間もいる。布団で寝れるし、衣類も支給される。ホームレスになるよりもよほど快適な「0円生活」が送れる、と考えて再び罪を犯す。そんな“監獄リピーター”を続けているうち、高齢になってしまったという受刑者が思いのほか増えている。  では、どうするか。受刑者が高齢受刑者の介護をするだけでは当然足りないので、民間の介護会社が寝たきりになった受刑者の面倒を見なくてはいけない。バカバカしいと思うかもしれないが、法律では受刑者を健康な状態で服役をさせなくてはいけないのだ。納得いかないかもしれないが、高齢受刑者の介護は国の義務なのだ。

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