「あれから2年」というカレンダー記事ばかり――残念な震災報道相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2013年03月21日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

 当欄で対談させていただいたジャーナリストの烏賀陽弘道(うがや・ひろみち)氏の著作『報道の脳死』(新潮新書)を改めて手に取ってみた。

 この中で烏賀陽氏は「カレンダー記事の安易さ」という項目でメディア業界の悪しき習慣に触れている。要するに、大きな事件や事故が発生して以降、“あれから何年”という主旨で記事が自動的に作られているという構図だ。同書の一部を以下、引用する。

 1.カレンダー記事は紙面を埋める記事が事前に予測できる。デスクなど内勤編集者のストレスが軽い。前年を参考にすればよいので、記者は取材や執筆が楽だ。

 2.独自ダネ記事を用意するには、記者を事前に取材させなければならない。新しいネタを見つけるには経費や時間、手間といったコストがかかる……(中略)……カレンダー記事は「ニュースが発生したから」「記者がニュースを見つけたから」記事が掲載されるのではない。その日が来たら自動的に記事が発生する。記者の能動性を奪う。

 烏賀陽氏の指摘に、先の“あれから2年”を当てはめてみると、ピタリと符合する点ばかりなのだ。

 慰霊祭だけではない。被災地の現状をルポするという多種多様な企画にしても、被災3県の地元新聞、テレビ局で取り上げられた人物やイベントを改めて在京メディアが取材した、いや焼き直したモノが少なくなかったのだ。

 もちろん、地道なアンケート取材や専属の記者やスタッフを現地に配置して丹念に取材していたケースもあったが、震災特集を見守っていた私の大まかな印象では、これらはごくごく少数派だった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.