地域エゴだけで決めていいのか? 日本の骨格、北陸新幹線のルート杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)

» 2013年05月31日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

日本の骨格としては小浜ルートが本筋のはず

 新幹線は地域の発展に意味を持つ。3つのルートがあれば、当然、それぞれのルートに関わる自治体の駆け引きが始まる。しかし、北陸新幹線を経由地の利益だけで考えてはいけない。日本の骨格をつくるという意味では、小浜ルートが最適である。大阪まで乗り換えが不要になるし、JR東海の東海道新幹線区間を切り離せるからだ。どこかで東海道新幹線が関わると、東京大阪間の二重化の意味がなくなる。

 1973年に国が定めた新幹線整備計画において、北陸新幹線は「長野市付近、富山市付近、小浜市付近を経由する」と明記されている。つまり、計画の本筋は小浜ルートであった。北陸新幹線建設促進同盟会の資料では現在も小浜ルートしか掲載されていない。北陸新幹線建設促進同盟会は、石川県・富山県・福井県・新潟県だけではなく、東京都・埼玉県・群馬県・長野県・京都府・大阪府が加盟している。北陸新幹線が通過する都府県すべてが参加する組織であり、建設を国に働きかける公式な組織である。

新幹線の建設整備を担う鉄道・運輸機構の北陸新幹線紹介サイト。整備計画に基づいて「小浜市」の文字はあるものの、図には敦賀以降のルートが明示されていない(出典:鉄道・運輸機構)

 公的組織が小浜ルートを推しているにもかかわらず、なぜ湖西ルート、米原ルートが浮上したのか。小浜ルートは費用が大きすぎ、建設期間も長いからである。財源が確保できなければ建設できないかもしれない。実現性で言えば湖西ルート、米原ルートに分がある。国土交通省や鉄道・運輸機構も、この2つの案に配慮しているようで、敦賀―大阪のルートについては「明記しない」あるいは「3案を併記」の資料ばかりだ。その優柔不断ぶりが混乱に拍車をかけている。

 そんなところへ、2010年に大阪府知事だった橋下徹氏が米原ルートの支持を表明。建設費用負担に難色を示し、北陸新幹線問題に消極的だった滋賀県知事に対し、大阪府が肩代わりするかのような態度で説得。さらに関西広域連合も米原乗り換え案の支持に回った。関西広域連合とは、滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・和歌山県・鳥取県・徳島県・京都市・大阪市・堺市・神戸市が参加する連携組織である。

北陸新幹線建設促進同盟会が制作したポスター。敦賀―大阪は小浜ルートのみ。このポスターは大阪と金沢・富山を結ぶJR西日本の特急列車「サンダーバード」の車内に掲示された(出典:富山県Webサイト)

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