地域エゴだけで決めていいのか? 日本の骨格、北陸新幹線のルート杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)

» 2013年05月31日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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東京―大阪間の二重化こそ国土の骨格

 東京―大阪間の二重系統については、JR東海のリニア中央新幹線計画も考慮する必要がある。JR東海によると、リニア中央新幹線は2045年に大阪に到達目標という。その時点で東京―大阪間の新幹線は二重系となる。ただし、東海道新幹線と中央新幹線はどちらもJR東海が事業主体である。線路が複数あるというだけで、事業主の二重系にはならない。

 関西広域連合は「リニア開業後は東海道新幹線のダイヤにゆとりができるから、米原乗り換えを解消し、北陸新幹線を東海道新幹線へ乗り入れる」という。JR東海も「検討の余地あり」と表明したようだ。しかし、リニア開業後の東海道新幹線は、東名阪輸送の負担が軽くなったぶん、神奈川県、静岡県、岐阜県、滋賀県など、のぞみが通過していた地域のサービスを向上させる使命があるはずだ。関ヶ原の積雪でダイヤが乱れたとき、東海大地震で混乱したとき、JR東海は北陸新幹線の面倒を見てくれるだろうか。

 JR東海のリニア中央新幹線計画は、JR東海の利益だけではない。東名阪の主軸を支え、世界に日本の技術を誇示するプロジェクトである。JR東海の役員諸氏のほとんどが、2045年にリニアが新大阪駅に届く前に天寿を全うされるであろう。しかし、この国にとって必要だからと、自分では乗れない列車の計画を進めている。それに引き換え、関西広域連合の「早く、安く」というプランは「俺の目の黒いうちにやれ」という印象だ。なんと刹那的なことか。

 新幹線計画とは国土全体の発展のための計画である。経済性だけでは判断できない国策もある。関西広域連合の米原乗り換え案は、経済性の一点で押しまくる壮大な地域エゴだ。米原ルートが必要ならつくればいい。しかし、それは「必要」と判断した関西広域連合の仕事である。国は国土の将来を見据えて、小浜ルートの整備に着手すべきだ。

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