満席のはずが乗客なし! 今日も“幽霊”が列車に乗っている杉山淳一の時事日想(1/6 ページ)

» 2013年08月09日 08時06分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 青春18きっぷの愛好者に人気の夜行快速列車「ムーンライト」シリーズは、夏休みや年末年始などの旅行シーズンに運行される臨時列車だ。今夏は東京駅と岐阜県の大垣駅を結ぶ「ムーンライトながら」、新宿と新潟を結ぶ「ムーンライトえちご」、新宿駅発で長野県の白馬駅行きの片道設定となる「ムーンライト信州81号」の3種類が設定されている。

 「ムーンライト」は普通列車扱いだから特急券や急行券は不要。車両は特急タイプだから揺れは少なく、背もたれも倒れるから仮眠しやすい。ただし全車指定席だから指定席券が必要となる。

 3年前の夏。青春18きっぷを使って夜行快速列車「ムーンライト信州81号」に乗った。新宿発23時54分。次の立川駅は00時29分発。そこで、都内の自宅最寄り駅から立川まで、数百円の普通乗車券を購入し、立川から青春18きっぷに日付を入れてもらう。青春18きっぷは1回分当たり1日有効だから、こうして0時過ぎから使えば、有効期間を最大限に利用できる。青春18きっぷユーザーの定番テクニックのひとつだ。

「ムーンライト信州81号」は、5時40分に白馬駅に到着後、直ちに松本方面に回送される。青春18きっぷ利用者だけではなく、登山者にも人気の列車だ

 この時、私の席は通路側のB席だった。隣の窓側、A席は空いていた。私は窓側のA席が良かったけれど、出発前日に購入したためほぼ満席で選択肢はなかった。通路側とはいえ、席が確保できただけでも幸運だ。新宿駅を発車する前の車内放送でも「全車指定席、本日は満席」と言っている。飛び込みで乗っても座席はない、というわけだ。

 新宿駅を発車する時、A席は空席のまま。きっと途中からお客さんが座るのだろうと思った。それまで起きていようと思った。私が足を伸ばして眠ってしまったら座り辛いだろう。しかし、立川、八王子を発車しても空席のまま。大月駅は01時27分発で、やっぱり空席。私は睡魔に負けて眠ってしまった。

 結果として、A席の客は来なかった。旅行を取りやめる事情があったのだろう。それにしても、せめてキャンセル手続きをしてくれたら良かったのに。私は乗車前にも指定券販売機をチェックしており、窓際が空いていれば交換するつもりだった。A席の客がキャンセルしてくれたら、この窓際の席は私が使えたはずだった。

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