JRにとっては「キャンセル未遂」より「乗車券を伴わない指定券」を購入されるほうが痛手だろう。移動サービス料金の本体は乗車券である。指定券はオプションだ。オプションだけ買われて乗車されない、つまり乗車券が売れなかった場合の損失は大きい。それに、乗らない人が列車を満席にしてしまうと、その列車に乗りたかった人が乗れない。乗れなかった人たちは「指定券が取りにくいから」と鉄道の旅をあきらめてしまう。これだって機会損失である。
もっとも、鉄道に限らず、日本の企業の営業施策は性善説だったかもしれない。「指定席を使わないなら、次に使いたい人のためにキャンセルする」は、アタリマエのことだった。いや、営業施策に限らない。「途中の駅で降りるなら、次に使う人のために座席のゴミは残さず持っていく」とか「トイレをふだん以上に汚してしまったら、次に使う人のためにトイレットペーパーで拭いておく」など、他人への気配りができない人が増えているようだ。
残念ながら「顧客は常に正しい行動をする」という性善説では営業施策は成り立たない。指定券販売施策は、不公平を抑止する方向で改めてほしい。
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なぜ「必要悪」の踏切が存在するのか――ここにも本音と建前がCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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