ここで、「直接税」と「間接税」の違いをおさらいします。
「直接税」とは、税金を納める人とその税金を負担する人が同じである税金のこと。所得税や法人税などがそうですね。稼いだ人が稼いだ分に応じて、直接納税します。
「間接税」とは、税金を計算して収める人とその税金を負担する人が異なる税金のこと。消費税や酒税やたばこ税などがそうです。間接税の場合は、事業者が物やサービスの価格に税金を上乗せしてその分を計算して納税しますが、実質的にその税を負担しているのは消費者です。間接的に消費者が税負担をしているわけですね。
過去、日本はずっと「直接税>間接税」でした。間接税の代表である消費税が導入されたのは平成元年で、まだ25年しか経っていません。それまではずっと法人税と所得税が中心でした。でも昭和の時代は、直接税中心でよかったのです。
あの頃は、日本の経済が高度に成長していたので企業も国民も順調に収入を増やしました。だから法人税や個人の所得税などの「直接税」だけでも安定的な税収があったわけです。
それが、経済が成熟し高度成長から低成長の時代になると、誰もが収入を増やすということができなくなります。伸びる企業もあればダメになる企業も出ます。個人でも稼げなくなる人も出てきますし、いつまでも働けるという保証もありません。平均的な給与水準も下がってきました。
そうなると、直接税の税収は当然不安定になります。平成に入って以降、ずっと景気後退期が続いた日本がまさにそうでした。
直接税の収入が不安定になると財政が厳しくなるので、税収を回復させるためにも景気を良くしようと断続的に景気対策を打ちます。財政出動を繰り返し、財政はどんどん悪化していきます。
つまり、経済が高度成長から低成長時代に入っているにもかかわらず、景気に左右される直接税中心のままの税収体系が、日本の財政をここまで悪化させたという側面があるわけです。
中小、零細企業の8割は赤字とも言われています。赤字法人は法人税を払っていません。バブル後の不良債権処理はとっくに終わっている大手銀行の多くも、いまだに法人税を納めていません。個人所得も減り続けています。生活保護を受給する世帯は増加の一途をたどるばかりです。
さらに、これから高齢化が進むと、所得税を負担しない世帯は今後ますます増えていきます。
低成長時代に入っている日本は、すでに直接税では財政をまかなえなくなっています。だから税体系を消費税などの間接税主体に切り替えていかなければいけないのに、消費税反対論者の人たちが言うように「大企業や高所得者へのさらなる課題を!」、つまり「さらに直接税割合を強めよう」という方向性には無理があると思うのです。
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