「じぇじぇじぇ」「倍返しだ!」――ドラマの決めゼリフがなぜ流行語に? 博報堂・吉川昌孝のデータで読み解く日本人(2/4 ページ)

» 2013年09月10日 00時00分 公開
[吉川昌孝,Business Media 誠]

流行語の王様は使いやすい一発ギャグだった

 古くは1991年の「……じゃあ〜りませんか」から、1998年「だっちゅーの」、2000年「おっはー」、2003年「なんでだろう〜」、2008年「グ〜!」、そして昨年の「ワイルドだろぉ」まで。流行語大賞を獲得した一発ギャグは数多く存在します。大賞手前のトップテンまで広げれば、ここ5年以内だけでも「LOVE注入」「ととのいました」「そんなの関係ねぇ〜」などさらにその数は多くなります。

 そもそもいろんな人の口の端にのり、流行語となるためには、いつでも、どこでも、誰でも、そして誰に対してでも気軽に使える、そんな汎用性を持っていることがとても大事です。一発ギャグはその名のとおり、前後のシチュエーションや、相手との関係性にそれほど縛られずに、合いの手のように、会話を楽しむため使うには最適な言葉ですよね。(今年でいうなら「今でしょ」がそれに当たるでしょうか。一発ギャグではありませんが……。)

 それに比べると、ドラマの中の決めゼリフは、物語の設定や主人公のキャラクター、ストーリーの文脈など、制約条件が多く、使いたくても使う機会がなかなかない。さらにドラマを見ている人にしか分からない。軽率に使ったら浮いてしまうかも。そんなリスクを伴うのがドラマの決めゼリフだと思います。だからこそ、一発ギャグほど頻繁に流行語大賞を取るに至らなかったのかもしれません。

一発ギャグ的な反射的コミュニケーションに疲れた生活者

 では、なぜ今ドラマの決めゼリフから流行語が生まれようとしているのでしょうか。その1つの背景として、生活者の反射的コミュニケーションへの疲れがあると思います。相手から来たメールに対して即レスしないと逆に無視されるかもしれないという恐怖。ネット上で下手なやりとりすればかつては「KY」と言われ、下手すれば炎上。

 LINEの普及後は相手のメッセージを読んだかどうかが即座に分かってしまうため、KS(既読スルー)なんて言葉まで生まれる始末。条件反射どころか、脊髄反射並みのレスが日々求められています。「SNS疲れ」はネット辞典に掲載されているほど一般的なことになろうとしてます。

 一発ギャグの使用は、こうした傾向に拍車をかけてしまいがちです。なんとなく使いたくない。そんな気持ちが生活者の中で高まっても、仕方ない状況ではないでしょうか。

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