「じぇじぇじぇ」「倍返しだ!」――ドラマの決めゼリフがなぜ流行語に? 博報堂・吉川昌孝のデータで読み解く日本人(3/4 ページ)

» 2013年09月10日 00時00分 公開
[吉川昌孝,Business Media 誠]

SNSにより可視化されたドラマ視聴者の共振ワールド

 「SNS疲れ」を生む一方、そのドラマに萌えている視聴者同士をつなげ、その気持ちを増幅させるのも、SNSのもう1つの側面です。ハッシュタグや秘密のグループ、タイムラインなどで、放送中から放送終了後まで、ドラマを見ながらつぶやく。また、その日の放送の感想と次回への期待、すぐに作成したGIFアニメ(画像ファイルの形式・GIFをメディアとしたアニメーション)やその日の名場面のイラストなど、ドラマの世界に思う存分浸り、反すうできる視聴者同士の共振ワールドが活況です。

 この世界に集う人たちはすべて(そのドラマの世界を)「分かっている人」たちです。安心して決めゼリフも使えます。さらに、そこで生活者が気づくのは「自分が感動していたことに同じように感動していた人がこんなにいるんだ」という仲間の存在です。

 そして視聴率アップのニュースが流れれば、その仲間がどんどん増えていることを実感します。世の中的なお墨付きをもらえたなら、SNSの中だけの共振ワールドを出て(現実世界で)も、そのセリフを使えるのでは? と思うわけです。そう、きっと通じるはず。勇気を持って発します。

 「じぇじぇじぇ」

 「倍返しだ!」

 ドラマが世の中から認識されることにより、今度はこの決めゼリフが、仲間であることを確認し、安心を育むための「合言葉」になっていくのです。

 そうであるならば、高視聴率獲得=世の中的なお墨付きをもらったドラマから、すべからく流行語が生まれてくるはず。でも前述のように、高視聴率だからと言って流行語が生まれているわけではありません。なぜ「じぇじぇじぇ」や「倍返しだ!」は流行語になりえたのでしょうか?

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