吉野家が、国会議事堂内で1200円の「牛重」を限定販売していることが話題を呼んでいます。この牛重は、国会議員をはじめ「国会通行証」を持っている人でなければ食べることが出来ない特別なものだとか。そして、これに対して「国会議員だけが特別扱いを受けるのはおかしい」という批判や意見が出ているようです。
確かに、この「牛重」はいろいろな意味で特別です。
なるほど、確かに牛重は少し豪華な雰囲気を感じます。消費者としては「一度くらい食べてみたい」というのが心情というもの。しかし、私は同時にこんな疑問を抱きました。
「この牛重、本当に1200円も払う価値があるのだろうか?」
国会議員だけが特別扱いと言われていますが、冷静に考えてみると、それは「1200円」がオトクな値段であるときに初めて成り立つ批判であり、逆にその金額が割高なら、国会議員はむしろ損をしていることになりはしないか? ということです。
というわけで、今回は吉野家の牛丼、牛重の「原価」について考えてみたいと思います。
まずは、通常の吉野家で食べる牛丼(並盛)について分析します。
吉野家ホールディングスの損益計算書によると、売上高に対する売上原価の比率は概ね35%程度です。吉野家ホールディングスでは「吉野家」のほか「京樽」や「はなまる」といった業態も展開しているので一概には言い切れませんが、飲食店における原価率はだいたい30%台に落ち着くのが通常ですので、ここでは「35%」を素直に適用します。
牛丼の価格は、現在280円ですから、これに35%を乗じると「98円」。まぁ、だいたい原価は100円ということになります。
100円の原価に対して280円の価格と言うと「なんだかずいぶんボッタクリだなぁ」と感じなくもないですが、これはあくまで「粗利」の話。ここから店舗の人件費や光熱費、家賃などが引かれると、利益はほとんど残りません。
吉野家ホールディングスの決算短信には、事業単位ごとに「セグメント情報」が記載されています。それによると、国内の吉野家で得られている営業利益は、売上高に対して、約3%程度。牛丼1杯あたり9円しか利益が残らないことになります。
裏を返せば、通常の店舗営業を行うにあたって、1杯あたり180円の粗利が残っていれば、どうにか黒字を稼ぎ出すことができるということにもなります。
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