Tokyo Otaku ModeのEコマースサイト画面を見ても、いわゆる「ネットショップ的な」ものではないことが一目で分かる。アニメやイラストなどの柔らかいテーマ・商材を扱っているが、亀井氏らが拘るのはあくまでクールでシャープな訴求だ。「500 Startupのメンターの助言やさまざまな分野のエキスパートによる講演プログラムを通じて、Pinterestのような当時の最新トレンドを目の当たりにすることができたのも大きいですね」(秋山氏)
やはり、500 Startupsの存在が大きい。筆者もTechCrunch50を取材したことがあるが、Webサービスの発信地で、起業経験者・投資家から生の助言やシードマネーが得られるというのはバリューがある。「けれど日本からアプローチしても、『まず日本で成功させれば良いのでは?』と参加を断られることが多いと聞きます。僕たちはたまたま100%海外のユーザー向けにサービスを始めていたのが大きかった」と亀井氏は振り返る。
Tokyo Otaku Modeの構想時から国内で投資を受ける機会をうかがっていた亀井氏らだが、趣味の海外企業視察でサンフランシスコに行ったときに出会った投資家に紹介されたのが、500 Startupsだった。「最初は、特にアポもなくシリコンバレーを回ろうとしてたんですが、その人にそれじゃ意味がないよ、と指摘され、代わりにこれに参加したほうがいい、と」(亀井氏)
それにしても、いわゆる「オタク」向けのサービスが、海外の投資家に支持を得ることなど可能だったのだろうかと、筆者は素朴な疑問をもってしまう。海外にファンが多いことはよく知られているが、日本発の事業に投資するとなるとまた話は別だ。その疑問をぶつけると、次のように応えてくれた。
「彼ら(投資家)自身はオタクとは限りませんが、海外でも日本のコンテンツの支持が拡がっていることは良く知られています。また同時にそれを正規の手段で消費するインフラが整っていないことも彼らはよく知っている。そんな中、現状違法な手段で日本のコンテンツを楽しんでいる人は、かなり限られた層、正規の手段を提供すれば、一般層にチャンスは広がるだろうと――でそこに商機を見ている、ということですね。
Tokyo Otaku Modeのニューヨーク在住の仲間と話したときも、宮崎アニメは海外では子供向けのCartoonではなく、大人向けのArtとして位置付けれている。マンガ・アニメは子供のもので、大人になったら卒業するものという意識は変わらず強い。そこに僕たちが風穴を開ける――つまり子供向けではなく、大人も楽しめるチャネルを用意し、啓蒙することができれば、やはりチャンスは拡がるだろう、ということです」
そのチャネルの中心は、Facebookページと独自サイトだが、Tokyo Otaku Modeではファンイベントにも力を入れている。ファンが集う現場に身を置くことで、国・地域毎の嗜好の違いや、消費のされ方の違いなど行って始めて分かることもあるという。起業前は趣味で続けていた「海外視察」は、500 Startupsでのブートキャンプを経て、現在も続けられ、事業にフィードバックされているというわけだ。
日本のコンテンツ、特にアニメやマンガは海外で販売したり、そのグッズの販売を企画しようとすると、窓口が分散していることもあり、簡単には許諾が下りない。こうした交渉には時間がかかるが地道に進めつつ、作品そのものではなく、広く日本のポップカルチャーを想起させるようなイラストを紹介したり、いわゆる二次創作以外のオリジナル同人誌(こういったアイテムは海外のコアなファンが現地では入手が難しい)を販売したりすることで、ライトな層からコアなファンまでをTokyo Otaku Modeはカバーすべく取り組みを続けている。
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