絶好調はいつまで続く? 「iPhoneひとり勝ち」な日本のスマホ市場神尾寿の時事日想(2/3 ページ)

» 2013年12月09日 09時14分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 11月12日に米国の調査会社IDCが発表したレポートによると(参照リンク)、2013年第3四半期のグローバルでのスマートフォン出荷台数は合計2億6110万台で、そのうち81%をAndroidスマートフォンが占めている。他方でAppleの市場シェアは12.9%であり、2012年から1.5%減となっている。グローバル市場では、"圧倒的なシェアを持つのはAndroid"なのだ。

 しかし、この状況を鑑みて「日本でもいずれiPhoneが失速し、Androidが主流になるのではないか」と考えるのは早計だ。

 先のコラムで述べたとおり(参照記事)、日本でのiPhone好調は、iPhoneそのものの魅力が高いだけでなく、"iPhoneを取りまく環境に売れる要因が移ったこと"による影響が大きい。ケースやアクセサリなど周辺市場の大きさ、iPhoneユーザーの多さによる安心感などが、iPhoneを選ぶ理由になっている。

 また、日本ではキャリアがスマートフォンの販売モデルを構築しており、各キャリアは競争上の戦略商品である「iPhone」を端末価格や利用料金面で優遇している。その一方で、Androidスマートフォンはキャリアによって日本市場向けのカスタマイズや品質面での高い要求水準が設定されており、「安価なAndroidスマートフォンが登場しにくい」環境になっている。これらの理由からiPhoneとAndroidスマートフォンで価格差がつきにくいため、海外市場のようにAndroidメーカーがコストパフォーマンスを武器に戦うことが難しい。

 このようにiPhoneは、日本市場の特殊性やキャリア主導の販売モデルをうまく味方につけて今の優位を築いている。そのためAndroidスマートフォンがそれを切り崩すのは容易ではないのだ。

来春商戦もiPhone圧勝の可能性大

 では、今後はどうか。

 筆者は来春(2014年春)商戦も「iPhone圧勝」になると予測している。次の春商戦はフィーチャーホンからスマートフォンへの乗り換え特需の終盤戦になるのだが、ここでの主役はスマートフォンに詳しくなく、それほど強い関心も持たない一般ユーザー層だ。彼らにとって重要なのは、デザインとブランドイメージがよく、性能と使いやすさのバランスが取れていて、なにより周りに先輩ユーザーが多くて困ったときに助けてもらいやすいこと。「スマホ選びで失敗しないこと」が前提になるため、iPhoneはこれまで以上に有利になる。

 その上、来春商戦はキャリア各社や販売店も、これまで以上に「iPhone推し」をする可能性が高い。iPhoneの「手離れのよさ」が重宝されるからだ。

 「iPhoneは『これはiPhoneです』と言えば、お客様には分かる。しかしAndroidスマートフォンは、いろいろな機種があるので個々の特徴や良さなどを説明しないといけない。Androidスマートフォンは、指名買いで来るような"分かっている人"にはいいのですが、ケータイから何となくスマホに変えたいといった初心者ユーザーには売りにくいのです。さらにサポートの手数や販売後の問い合わせ件数も、iPhoneの方が少ない。(各種手数料や報奨金の違いで)Androidを売った方が儲かるのだけれど、春商戦のように忙しいときはiPhoneを売りまくった方が楽なのですよ」(販売会社幹部)

 1年でもっともケータイやスマートフォンが売れる春商戦は、カウンターの回転率がとても重要になる。Androidに比べると販売店が儲けにくい面はあるが、iPhoneはケース市場が発達しており、平均的な販売価格帯がAndroidスマートフォン向けよりも高いため、「ケースを豊富に取りそろえて、利益を積み上げる」(家電量販店)ことが可能だ。

 とにかく契約数を稼ぎたいキャリアと販売店が、「売るのが楽」なiPhoneを推す。一般ユーザーも知名度が高くて既存ユーザーの多いiPhoneを、無難で賢明な選択として選ぶ。これらの相乗効果により、来春商戦のiPhone販売比率は6〜7割近くに達するだろう。

最新機種「iPhone 5s」(左)と「iPhone 5c」(右)

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