娘: 聞いた話なんだけど、英語って、外国語の中では簡単なほうなんでしょ?
父: 習得がって意味? そうだね、少なくとも、日本語よりは数段ラクだね。英語で「あなた」はyouだけど、日本語だと「あなた、キミ、オマエ、キサマ、てめえ、そなた、あんた、おたく」っていろいろでしょ。しかも、年齢や性別、時代でも変わるし。先輩後輩的な人間関係でも言葉選びって変化するでしょ。
娘: 外国人からしたら、使い分けがわけわかんないよね。
父: 丁寧語、尊敬語、謙譲語って、外国人が身に付けるには、そうとう努力しないとね。菓子>お菓子、茶>お茶にはなるけど、鉛筆>お鉛筆にはならない。使い方がケースバイケースで、複雑すぎる。
娘: 日本語って、もしかして世界でトップクラスの難しさじゃないの?
父: 世界で最も習得が難しい言語のトップ3は、たしかアラビア語、中国語、日本語だったはずだよ。
娘: 中国語もか。確かに、漢字の量がすごいもんね。
父 日本語は漢字以外に、平仮名、カタカナもあるね。漢字にも音読み訓読みがあって、その3つの組み合わせは無数にあるもんね。
娘: 英語ってアルファベットだけか……。何だか、英語って簡単そうに思えてきた(笑)。英語の先生も、「パターンさえ覚えれば、英語なんて楽勝だ」って話してたよ。
父: 英語はプラモデルみたいなもん。説明書通りにやれば、誰が作ってもそこそこ仕上がる。日本語は粘土かな。微妙な力加減で揉んで、自分なりに形作っていかなきゃいけないようなあいまいさがあるね。
父: さっきペラペラになりたいって話してたけど、外国に行くチャンスがあったらどうよ? 留学とか。
娘: 留学って?
父: 外国の学校で勉強するってことね。
娘: 何も知らない土地で、1人ぼっちになるってことだから……何となく、怖い。
父: お父さん、それしたんだぞ。寮生活だったから、衣食住は心配なかったけど、校内はおろか、町内唯一の日本人だった。
娘: お母さんから聞いたけど、高校卒業してすぐアメリカに行ったんだよね?
父: うん、卒業の3日後かな。名古屋から新幹線で東京行って、成田に移動して、成田からノースウエスト航空のシカゴ経由、シーダーラピッズ行きでね。
娘: いまだに覚えているんだ。飛行機の中も全部英語?
父: もちろん。機長のアナウンスはチンプンカンプン、フライトアテンダントのしゃべりは半分も聞き取れない、入国しても右も左も分からない。
娘: どうやって学校と連絡とったの?
父: 公衆電話から何とか電話して、「ワタシ、ナカヤマデス。イマ、クウコウニ、ツキマシタ。ムカエニキテクダサイ。ヨロシク、オネガイシマス」なトーンで伝えたよ。
娘: へーーー、伝えられたんだ。
父: 一応、高校卒業レベルの英語力はあるからさ……。でも、相手の言ってることは、半分以上聞き取れなかったよ。本場の英語に接するのは、生まれて初めてだったんで。
娘: 友達とか、どうしたの? 英語が下手だと、できなくない?
父: 友達は意外にもすぐできちゃうよ。例えばスポーツやるとすぐ仲良くなれる。話せなくても、サッカーやバスケはできるでしょ?
娘: そっか。「パスパス! ヘイヘイ!」で、やれちゃうもんね。
父: 日本人以外の外国人留学生もいるしさ。似た者同士だと、話も合うよね。それに、年齢だって近いんだから。
娘: ふーん、友達作りで苦労はしなかったんだ。
父: 貝のように黙りこくっていない限り、自然に増えていくよ。サオリは、もし行けるとしたらどの国に行ってみたい?
娘: そりゃ、アメリカ?
父: イギリス、オーストラリアも英語だよ?
娘: 外国の知識がないから、わかんない。英語ならやっぱアメリカじゃないのってくらいで、こだわりはない。
父: 勉強してみたいことって思い付く? まだ想像もできないだろうから、妄想レベルで構わないけど。
娘: いやー、まだ全然……。
父: 今の興味の範囲で思い付くとしたら? 柴犬や美術が好きでしょ?
娘: そういうことなら、動物飼育かな。美術も好きだから、そういうことが勉強できたら、楽しいのかな。
父: 例えば、映画とかエンタメ系ジャンルの学校もあるね。
娘: 『モンスターズ・ユニバーシティ』みたいなアニメのキャラクターデザインを作りたいな。そういうことの学べる学校なら、興味あるなあ。
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