日本経済を救うには? 「歴史学習」と「シンクロニシティ」が必要グローバルエリートから見た世界(3/4 ページ)

» 2014年01月07日 08時00分 公開
[原田武夫,Business Media 誠]

ある日突然、気づく

 こうしていく中である日突然、「気づく」ことがあるのだ。あるいは「閃(ひらめ)き」とでもいうべきものかもしれない。きっかけとなるのは、普段ならば何気ないものとしてやり過ごしてしまう「他人や本との出会い」、あるいは「ある出来事に遭遇すること」である。これらを「思考の枠組み」を通して見る時、「ひょっとしてこれからこうなるのでは?」という風に閃くのだ。

 そして一度気づき、閃いてしまった以上、私たちはそこであらかじめ知った方向性に沿って動きたくなってくる。なぜならば「気づき」や「閃き」が生じるということは、未来に何が起きるのかが頭に浮かぶ一方で、今現在からそこに至るまでの道のりも不思議と頭の中で描けているはずだからだ。こうした「気づき」や「閃き」をもたらすさまざまな出会い・遭遇のことをスイスの心理学者C.G.ユングを学ぶ学者たちは「シンクロニシティ(共時性:意味のある偶然の一致)」と呼んでいる。

 「なぜ気づきや閃きが生じるのか。そこにあるマジックは何か?」。そうユング派の心理学者たちは考え、研究を深めてきた。

 一方、ビジネスの世界ではあらかじめ「オイルショック」を優れたシナリオプランナーたちの事前の提言から予測し、巧みに乗り切ることで世界シェアを格段に向上したシェル社の例が取り上げられ、「経営のためにはまずシナリオを作らなければ」としばしば語られる。そしてそのためのワークショップも米国や欧州、そして日本においてしばしば開催され、最近でもあらためて「シナリオプランニング」を取り扱った図書がブームだと聞く。

 そうしたワークショップではファシリテーターが「皆さん、どんな未来が見えますか。そのイメージについて議論しましょう」と言い、意見を出し合ってシナリオをまとめていくのが普通なのである。だが、私の目から見るとこうしたアプローチは決定的に誤っている。

 なぜならば「歴史」「過去」を徹底して学び、「思考の枠組み」を頭の中で積み上げることにより、とある現実から降り注がれる“情報”から未来に向けての「意味」を読み取る作業は、これまで述べてきたとおり、恐ろしく個人的(インディヴィジュアル)なものだからだ。誰かから言われて「はい、そうですか」と信じれば良いというものではなく、自分自身の行動によって「なるほど!」と納得するからこそ人は動くことができるのである。それまで自らが行ってきたこそ全てが今、遭遇した人々や物事につながり、それが未来へと照射された瞬間に、人は「これからなすべきこと」を知る。そしてそれが本当の意味での「シナリオ」なのである。

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