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青色申告とは? 白色申告とは? 独立を考える人も知っておきたい個人事業主の税金消費税8%時代の確定申告(3/3 ページ)

» 2014年02月05日 08時00分 公開
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納税額が減る特典がいくつもある青色申告とは

 白色申告をするすべての事業者に記帳義務が課せられることになり、青色申告への移行を考える人は多いと思われる。これから独立する人も白色申告を選ぶメリットが減ったとなると、なんだかよく分からない青色申告を真剣に検討する必要を感じているだろう。

 青色申告には、納税額を減らせる特典がいくつも用意されている。半面、複式簿記による記帳、貸借対照表、損益計算書の提出など、それなりの条件をクリアしなければならない。「複式簿記、貸借対照表、損益計算書……何だそれ」と独立時に筆者も思ったが、結論から言うとこれらの書類は簡単とは言わないが青色申告ソフトを利用すれば乗り越えられるハードルだ。青色申告ソフトに関しては連載の後半で説明する予定だが、今回は青色申告の代表的な特典について触れてみたい。

青色申告特別控除

 青色申告をすることで得られる特典の代表格が青色申告特別控除だ。複式簿記で記帳、貸借対照表、損益計算書を添付して期限(通常は3月15日。今年は土曜日なので3月17日)までに確定申告を提出すれば65万円の控除が受けられる。白色申告と同じ単式簿記で記帳すると10万円の控除となる。基礎控除やサラリーマンの給与所得控除のように1円の出費もなく課税所得を減らせるのでおいしい節税となる。

 65万円の控除が受けられると所得税の税率が10%の人なら6万5000円の節税となる(実際にはさらに復興特別税分も節税になる)。住民税の10%と合わせると13万円の節税だ。地域によって差はあるが国民健康保険も金額が下がる。青10の10万円の控除だと、所得税で1万円、住民税で1万円、合計2万円の節税となる。当然どちらも税率の高い人ほど節税効果は大きくなる。13万円と2万円はかなり差があるので、できれば複式簿記で記帳して65万円の控除をゲットしたい。

青色申告特別控除 青色申告特別控除

青色事業専従者給与

 青色申告をしている事業者は、本人の家族に支払った給与を経費にできる。逆の言い方をすると、原則として手続きなしに家族に対する給与を経費にできない(=お小遣い)ということだ。家族を青色事業専従者にする条件は15歳以上で半年以上事業に従事していること。学生や他に仕事を持っている家族は対象外となる。青色事業専従者にする場合は事前に届出が必要で、報酬も常識の範囲に限定される。また青色事業専従者になった人は配偶者控除、扶養控除の対象外となる。

 奥さんに帳簿の入力を任せたり、喫茶店などのお店を手伝ってもらったりして毎月15万円の給与を払えば年間180万円を経費にできる。ただし、配偶者控除の対象から外れるので38万円の控除は差し引かれる。経費が180万円増えると所得が180万円減る。控除は38万円減るが課税所得は差し引き142万円減ることになる。奥さん自身も課税対象者となるがトータルでは納税額を減らせる。

 白色申告の場合は家族に給与を支払っても奥さん(配偶者)なら年間86万円、子どもなら50万円と経費にできる金額に制限がある。子どもに手伝ってもらっても経費にできるのは50万円(約4万円/月)だけ。経費が50万円増えても扶養控除が38万円減るので差は12万円。課税所得が12万円減っても青色事業専従者給与と比べるとそれほど大きな節税にはならないので、奥さんや子どもに手伝ってもらえる事業をしている人は青色申告を選択するメリットが大きい。

赤字の3年繰り越し

 青色申告を選択すると赤字を3年繰り越せる。飲食店を開業するケースで店舗の改装費が発生し、初年度が赤字になった場合を考えてみよう。このお店では、1年目が500万円の赤字、2年目から100万円、3年目200万円、4年目500万円の黒字になった。

 1年目の赤字を繰り越すと、黒字になった2年目でも「100万円−500万円」、3年目も「200万円−400万円」となり納税する必要がなくなる。4年目も500万円の黒字から200万円の赤字を相殺できるので大幅な節税だ。

 初期投資が必要な事業を始める人や事業立ち上げに時間を要する人、あるいは浮き沈みが激しい事業をしている人は、青色申告を選択すると納税額を減らせる。

赤字の3年繰り越し 赤字の3年繰り越し

 これらの特典以外に減価償却の特例も節税効果は高い。減価償却の特例を理解するには固定資産の知識が必要なので、次回の個人事業主の節税で詳しく解説したい。

 青色事業専従者給与、赤字の3年繰り越し、減価償却の特例は青10でも同様な特典が得られる。白色申告の記帳義務化を考えると、現在白色申告をされている方は最低でも青10に変更することをお勧めしたい。

 白色申告の人が青色申告に切り替える場合は、3月15日までに青色申告承認申請書を提出する必要がある。今年から青色申告に切り替えるなら期限はすぐ間近だ。

監修:税理士 木村聡子(きむら・あきらこ)

木村聡子

 2000年に木村税務会計事務所を設立。ブロガー税理士の草分け的存在。セミナー講師や執筆について多数の実績があり。カフェ好きが高じてオフィスをカフェ風にしてしまったほど。ブログでは税金に関するトピックだけでなく、カフェラリーのデータも掲載中。

事務所名:木村税務会計事務所

住所:〒158-0097 東京都世田谷区用賀2-11-10 ケヤキアパートメント201

公式サイト:KIMUTAX.com


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