被災路線をあえて手放す、JR東日本の英断杉山淳一の時事日想(3/4 ページ)

» 2014年02月07日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

ローカル線の自治体移転は時の流れ

 乱暴に言ってしまうと、鉄道が国有でなくなった。すなわち、国の交通政策の中で、鉄道が是ではなくなった。国は必ずしも鉄道を必要とはしていない。鉄道が必要なら、必要とする人々が維持、運行しなくてはいけない。今回は東日本大震災による復旧費用負担がきっかけになったが、仮に震災が起きなかったとしても、いずれJR東日本は赤字ローカル線の処遇について対処したであろう。

 赤字ローカル線の地方移転は各地で始まっている。前回の本欄で紹介した近鉄内部線・八王子線は近鉄本体から切り離し、公有民営方式に決まった(関連記事)。それ以前に近鉄は養老線、伊賀線を分離し、それぞれ養老鉄道、伊賀鉄道となった。北近畿タンゴ鉄道はJR西日本の宮津線を引き受けている。

 ちょっと状況は違うかもしれないが、新幹線開業による並行在来線の第三セクター化も、JRが「新幹線と両方は引き受けられない」と見限った路線を自治体が引き受けている。もっともこれは日本の貨物輸送の動脈を守るという意味で、もっと国が支援すべき問題ではある。

 近鉄内部線・八王子線の四日市市も、JR東日本山田線の被災も、どちらも辛い事情がある。だからといって民間企業に負担を強いる道理はない。今後も赤字路線の地方自治体移転の流れは続くだろう。これらは震災とは全く関係ない。時勢である。三陸地方だけがJR東日本に甘えられる道理はない。

三陸鉄道南リアス線・三陸駅の駅舎(左)、駅舎で売られていたお菓子(右)

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