進むクラウド化、デジタル化―最新会計ソフト活用で業務効率アップ

初めての人でもできる「白色申告」――やよいの白色申告オンライン編消費税8%時代の確定申告(2/12 ページ)

» 2014年02月14日 08時00分 公開

複式簿記と単式簿記で売り上げを記帳すると――帳簿の付け方の基本(3)

 売り上げが発生し、代金が入金された場合の記帳の仕方を紹介しておこう。納品は2月、入金は3月、源泉徴収され支払手数料も差し引かれたケースだ。単式簿記の場合は、通帳の管理をしなくてもいいので売り上げと支払手数料経費として記帳するだけだ。

2月28日 売上 原稿料   10000円

3月31日 経費 支払手数料 315円

 複式簿記の場合は少々複雑となる。納品し、請求書を出した段階で売り上げが立ち、入金までは売掛金が発生する。

2月28日 売掛金   10000円 / 売上高 10000円  原稿料

 入金があった場合は、売掛金が銀行の普通預金口座に振り込まれたことを記帳する。1万円の売掛金に対し入金金額が8664円だとすると、源泉徴収された1021円と振込手数料の315円が誤差として残る。売掛金の内1021円は源泉徴収され取引先が納税をしてくれて、315円は支払手数料として経費となったことを別途記帳して完了だ。

3月31日 普通預金  8664円 / 売掛金 8664円

3月31日 事業主貸  1021円 / 売掛金 1021円 源泉徴収

3月31日 支払手数料 315円  / 売掛金 315円 

 「事業主貸って何だよ」と思われるだろう。筆者はいまだによく理解していないので、源泉徴収されたら上記のように記帳すればいいらしいと割り切っている。

 これを見れば、預金通帳を転記しただけでは帳簿は完成しないことが分かる。実際には青色申告ソフトなどを使用すれば大半はソフトが勝手に複式簿記で記帳してくれるし、簿記○級を取る必要もないのだが、それでも独立する場合は最低限の記帳の仕組みは理解しておきたい。

家事按分は個人事業主に必須――帳簿の付け方の基本(4)

 個人事業主の経費は事業で使う分と私的に使う分が混在する。例えば、仕事専用の携帯電話と個人用の携帯電話、仕事専用のクルマと個人用のクルマ……と完全に分離できない場合は、「仕事9割、プライベート1割」といった感じで経費を分ける必要がある。自宅で仕事をする場合は、家賃、電気代、ガス代、上下水道代なども分ける必要がある。

 このように事業使用と家事使用を分けることを家事按分という。最終的に家事分を按分した比率で経費から差し引くので、あらかじめ経費の科目を按分を前提に分けておくと決算時に処理がしやすくなる。

 交通費の場合、電車賃は仕事の分だけ記帳すれば按分の必要はない。クルマ移動の仕事でコインパーキングを利用した場合も同様に按分の必要はない。しかし、ガソリン代、月極の駐車場代、車検代、自動車保険、自動車税などは按分する必要がある。これらの按分が必要な車両関係の経費は、交通費と分け車両費として別科目で集計すれば、1年分の経費の合計額から家事分を差し引く際に処理が楽になる。

コインパーキング

 サラリーマン勤めしていた人が独立して、自宅で仕事を始めると水道光熱費も激増する。サラリーマン時代には8時に家を出て22時に帰宅していたとすれば、寝ている時間を除くと自宅での活動時間は3〜4時間だ。

 ところが、独立して朝から晩まで仕事に追われると、それまで家にいなかった時間もPC、エアコンなどが稼働するので電気代は急上昇する。水道代などもトイレに行く回数が増えるので予想外に上昇する。逆の見方をすると、サラリーマンなら会社の電気代も水道代も気にすることは少ないが、独立したらすべて自分で負担するという事実を見逃してはいけないということだ。

 話を按分に戻そう。水道光熱費も電気代は60%、ガス代は10%、水道代は10%などと按分する比率が異なることがある。他に個人事業主が按分する必要がありそうな科目をあげてみよう。通信費の内、インターネット回線、固定電話、携帯電話は按分するが切手は100%事業用とか、地代家賃で家賃と月極駐車場代で按分値が異なるとか、自分自身の実情をよく考えてから記帳したい。

 按分する比率は面積で分けるとか、コンセントの数で分けるとか諸説あるが、実情に沿った比率をよく考えて決めればいいだろう。先ほどの電気代のように独立して激増した場合は、コンセントの数より滞在時間のほうが実情に近いと思われる。

経費の仕訳は按分する科目だけ注意――帳簿の付け方の基本(5)

 経費を帳簿付けする場合、水道光熱費、旅費交通費、通信費、接待交際費、消耗品費、雑費……など、さまざまな勘定科目に仕訳(分類)して記帳する。この仕訳が難しいと聞くことが多い。おそらく厳密に仕訳すると難しいのかもしれないが、筆者は「仕訳はだいたい合ってればいいんじゃない」程度に考えている。

 仕訳に迷ってもインターネットという強い味方もあるので、「○○ 仕訳」「○○ 勘定科目」と検索すれば、ほとんどの仕訳を調べることが可能だ。例えば、「名刺」の仕訳を調べると雑費、消耗品費、事務用品費、広告宣伝費と複数の答えが見つかるが、どれを選択しても納税額が変わるわけではないので神経質になることはないだろう。

 実務上で注意するのは、按分する勘定科目と按分しない勘定科目を間違わないことだ。例えば、クルマに関する費用を按分している場合、月極の駐車場代は車両費と仕訳して按分し、コインパーキングの利用代金は100%事業の経費なので旅費交通費として仕訳する。按分する経費と按分しない経費を間違って仕訳すると納税額に影響する。そこだけ注意すれば後はそれらしい経費に仕訳すれば大丈夫だろう。

木村先生から一言:

 損益計算書の勘定科目は、本文にもあるとおり、その事業者の考え方で自由にして構いません。名刺以外の例をあげると「本代」。仕事に関する情報収集のためなら「研究図書費」、自分のお店などが掲載されたため大量に購入し顧客に配るためであれば「広告宣伝費」になるでしょう。私のお客様には美容師さんがいますが、お客さん用の雑誌などは「サービス費」という科目名で処理をしています。ようは自分が「ピン」とくる科目名であればいいのです。

 自由に決められる科目名ですが、ひとつ心がけておきたいことがります。それは「一度決めた科目名(ルール)はみだりに変えないこと」。科目のルールを気まぐれで変えてしまうと「今年はもうからなかったけど、どんな出費が多かったんだろう?」といったような連年での比較の際に、役に立たなくなってしまいます。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.