「ブレーキは安全の最後のとりで」と書いた。しかしブレーキが効かなかった場合の安全装置も存在する。それは「安全側線」、別名「脱線ポイント」と呼ばれている。電車がオーバーランした場合、わざと脱線させて電車を止める仕組みだ。本線に進入して他の列車と衝突させるより、その列車だけ脱線させたほうがマシという、いささか乱暴なシステムである。赤信号と連動して、脱線ポイントが自動的に脱線側に切り替わり、青になると正しい方向に戻る。
東横線元住吉駅の駅に進入する線路には安全側線がなかった。しかしこれは設計ミスではない。安全側線のほとんどは、駅や支線から本線へと暴走する列車を止める位置に設置される。つまり、列車からみて駅の出口に作られる施設であって、入り口に設置される例は少ない。そもそも、元住吉駅は高架であり、脱線した勢いで落下したら大惨事になってしまう。また、ATCなど高度な非常停止装置があれば、安全側線は省略される。「安全側線はATCより高度」という前提になっているからだ。
今回の事故は、非常ブレーキシステムの信頼性が高まり、ブレーキ以上の安全策は不要という考え方の盲点を突いたといえる。正確な事故原因は国土交通省の調査結果を待たなくてはいけないが、「耐雪ブレーキとその運用」でなければ原因は何か、その対策はどうか、鉄道会社の雪対策のために明らかにしてほしい。
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